研究課題
冠動脈、頸動脈あるいは大動脈における石灰化は、CKD患者(Stage 3-4)や透析患者では非常に高率に認められる。われわれは以前に、ヒト冠動脈内膜切除標本や頚動脈プラークにはMsx2,やRunx2など骨形成に必須な転写制御因子とともにNotchシグナル分子が発現すること、in vitroにてヒト大動脈由来血管平滑筋細胞にNotch1を強制的に発現させると、血管平滑筋細胞は骨芽細胞様の細胞に分化し、Msx2をsiRNAによってノックダウンした血管平滑筋細胞ではNotchによる骨芽細胞へ分化はほぼ完全に消失することからNotchはMsx2経路を活性化し、血管石灰化を促進することを報告した。その後、Notchシグナルが、最終糖化産物 (AGE)の受容体(RAGE)の活性化や飽和脂肪酸によって血管平滑筋細胞が骨芽細胞に分化する過程にも関与することを見いだした。血管石灰化は骨粗鬆症と合併することが多い。骨粗鬆症では骨吸収が優位になるのに対して、血管石灰化は骨形成が優位になるメカニズムは未だ不明である。 本研究では、骨細胞にて産生されるリン利尿因子FGF23が血管平滑筋細胞に及ぼす効果を検討した。アデノウイルスを用いてFGF23を血管平滑筋細胞に過剰発現させると、リンによるBMP2, alkaline phosphatase (ALP)およびMsx2の発現増加が抑制された。一方、FGF23の過剰発現はosteoprotegerin (OPG)の発現を遺伝子の転写レベルで増加させた。したがって、FGF23の過剰発現はOPGの発現を増加させ、リンによって誘導される血管平滑筋細胞の骨芽細胞への分化を抑制することが明らかになった。また、こうした抑制効果はKlotho依存的に認められた。FGF23/Klothoシステムは、OPGの発現促進を介して、RANKL/RANK経路を抑制し、血管石灰化を抑制するシステムである可能性がある。
2: おおむね順調に進展している
FGF23は骨細胞が分泌するリン調節ホルモンとして同定された因子である。これまで、血管平滑筋細胞への直接作用については明らかにされていなかった。私たちの研究によって、FGF23は血管平滑筋細胞に直接作用して、OPGの産生を増加させることが明らかになった。この成果はおおむね順調な到達度と言える。
FGF23がin vivoで血管石灰化を抑制するか否かに関して研究を進める。血管石灰化モデルマウスにFGF23を発現するアデノウイルスを静脈注射することによって血管石灰化が抑制されるかを検討する。また、in vitroにて、FGF23がOPG遺伝子の発現を転写レベルで増加させるメカニズムをさらに詳細に解析する。また、培養骨細胞を用いて、FGF23遺伝子の発現調節機構を解析する。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
Artherioscler Thromb Vasc Biol.
巻: 34 ページ: 471-473
10.1161/ATVBAHA
PLoS One
巻: 8 ページ: e68197.
10.1371/journal.pone.0068197
Arterioscler Thromb Vasc Biol.
巻: 33 ページ: 2549-2557.