研究課題
加齢に伴って、糖尿病や動脈硬化、高血圧などの生活習慣病の罹患率が増加し、その結果、虚血性心疾患や脳卒中の発症の基盤病態となっている。しかし、加齢がどのようにしてこれらの疾患を増加させるのかについては明らかとなっていない。通常ヒト正常体細胞は、ある一定回数の分裂増殖後、細胞老化とよばれる分裂停止状態となる。本研究では、加齢に伴って生じる組織における老化細胞の集積、あるいは、p53依存性細胞老化シグナルの活性化が、寿命や加齢関連疾患の病態生理に関与する可能性があるという仮説を証明することを目的とする。これまで我々は、血管内皮細胞においてテロメアの機能不全を誘導すると、p53依存性細胞老化シグナル活性化とともにNO合成の低下や炎症性分子発現の亢進といった内皮機能障害が誘導されること、ヒト動脈硬化巣においてp53/p21の活性化や老化した血管細胞の集積が認められること、動脈硬化モデルマウスにおいて、p53/p21を欠失させることによって、動脈硬化の形成が抑制されることなどを報告してきた。平成24年度には、血管内皮特異的p53欠失マウスに加えて、血管内皮特異的p53活性化マウスの樹立に成功し、平成25年度にその解析を進めた。まず我々は、高カロリー食によって血管内皮細胞におけるp53老化シグナルが活性化することを見いだした。p53老化シグナル活性化により内皮由来の一酸化窒素の産生が低下すること、さらに一酸化窒素によるミトコンドリア合成が骨格筋で低下しエネルギー消費が低下することを明らかにした。その低下は内臓脂肪の蓄積と炎症を惹起することによって、インスリン抵抗性を悪化させていた。これらの変化は、血管内皮特異的p53欠失によって改善し、血管内皮特異的p53活性化によって増悪傾向を認めたことから、血管における老化シグナルの重要性が確認された。
2: おおむね順調に進展している
血管内皮特異的p53欠失マウスに加えて、血管内皮特異的p53活性化マウスの樹立に成功し、その解析が進んでいる。それらの解析の結果、血管内皮細胞におけるp53老化シグナルの糖尿病に対する重要性が明らかになっており、研究計画は順調に進展していると考えられる。
血管内皮特異的p53欠失マウスや血管内皮特異的p53活性化マウスを用いて、糖代謝に対する血管内皮p53老化シグナルの関与について、さらに分子機序を解明するとともに、心不全や動脈硬化などの病態における意義についても検証していく。
様々な遺伝子改変マウスの確立には成功したが、そのコロニーの増大については予定より時間がかかったため、マウス実験関連の経費がやや抑えられたため。平成26年度に向かってはマウスの交配も順調に進んでおり、当初の計画通り、マウス関連実験を進めていく。
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