研究課題
メタボリックシンドロームの各疾患の病態進行の原因となる内臓脂肪の慢性炎症の誘発や持続には、マクロファージが産生する分泌タンパク質AIMが深く関与している。本研究では、AIMがどのようにそのプロセスに関わるかを明らかにし、AIMの制御による病態進行の制御を目標とし研究を行った。AIM KOマウスに高脂肪食を与え、肥満を誘導すると脂肪肝が亢進することがわかった。これはAIMは脂肪細胞と同様に、肝細胞にとりこまれて細胞内で脂肪酸合成酵素に結合し、その酵素活性を抑制することで細胞における中性脂肪蓄積を抑えるため、AIMがないと脂肪含有が増加するものであることが判明した。このことからもAIMの有無、あるいは体内濃度が肥満関連疾患の進行に寄与していることが示唆された。上記のように、肥満関連疾患の病態変化にはAIMの体内濃度が関与する可能性が示唆された。そこでH25年度は、主にAIMの体内安定性に関する解析を進めた。AIMが体内(血中)で安定的にその濃度を維持するのにはIgM五量体との結合していることが必須である。そこで、IgMとの結合部位を探索したところ、IgMのFc領域にAIMは結合していることを確認した。また、Fc領域をクローニングし、マウスにAIM-Fc複合体として投与することでAIMを安定化させることに成功した。ヒトAIM血中濃度測定については、H25年度は約10000人のAIM測定を行った。肥満や肝臓の障害、糖尿病マーカー等メタボリックシンドローム関連の項目に加え、性別や生活習慣との関連がみられ、今後のAIM濃度と診断に応用できる可能性が高まった。
2: おおむね順調に進展している
AIMがインスリン抵抗性惹起や脂肪肝形成等の肥満関連疾患にどのように寄与し、またAIMの体内濃度がそのような疾患の病態進行に関与していることが示唆され、AIMの体内濃度調節が病態改善や予防に寄与する可能性が示されたため、AIMの体内濃度調節に関しては予定よりも大きく進捗が見られた一方で、AIM cKOマウスを用いた解析については遅れがみられている。しかしながらヒト解析については大きく進歩が得られ全体としてはおおむね順調な進捗がみられた。
引き続きAIMの体内量が肥満関連疾患の進行に与える影響を詳細に解析し、AIMの体内量調節の系の構築を試みる。またヒト血中AIM測定の継続と各種病理との関連性を明らかにし、上記項目を総合してAIMの体内量調節による疾患の予防や治療にむけた具体的な方法論の確立を目指して研究を行う予定である。
旅費を余裕をもって大きく見積もったが当初計画の50万円の使用はなかったため。おもに消耗品等の物品費の購入に使用する。
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PLOS ONE
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