研究課題/領域番号 |
24390198
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
廣岡 良隆 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90284497)
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研究分担者 |
井手 友美 九州大学, 大学病院, 講師 (90380625)
岸 拓弥 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (70423514)
伊藤 浩司 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (10452757)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 血圧 / 心不全 / 交感神経系 / 脳 / レニン-アンジオテンシン系 |
研究概要 |
本研究では心不全の発症から進展における交感神経活性化の役割をその枠組みに当てはめて解明することである。当該年度では以下の点を明らかにした。 高血圧から心肥大・心不全を呈するモデルラットにおいて脳室脈絡叢のミネラロコルチコイド受容体(MR)と上皮ナトリウムチャネルの活性化が高食塩負荷によるナトリウムの脳室内への取り込みを促進し交感神経活性化を生じていることを明らかにした。さらにアンジオテンシン1型受容体(AT1R)ノックアウトマウスを用いて、我々が開発した圧負荷後に食塩負荷を行うことによって交感神経活性化から心不全を発症する処置を行うと視床下部のMR活性化がAT1R依存性に生じることを明らかにした。 また、収縮機能不全を生じるモデルとして心筋梗塞後心不全モデルラットを用いて自然免疫系を介して炎症を惹起するToll-like receptor 4(TLR4)の活性化が炎症および交感神経活性化に関与していることを明らかにした。炎症性サイトカインであるIL-1やTNF-の増加が脳幹部で生じており、TLR4に対するsiRNAで活性化を抑制するとそれら炎症性サイトカインも抑制された。これらの成績は、免疫系を介する炎症性変化が交感神経活性化を生じていることを示唆する。さらにその抑制により左室リモデリングも改善したことから、この経路の重要性が示唆された。 さらに、拡張機能不全から収縮機能不全に至る高血圧性心不全モデルとして使用されているDahl食塩負荷ラットを用いてmoxonidineによる中枢性交感神経抑制効果による予後改善効果、リモデリング抑制効果を報告した。 現在、炎症・免疫系のクロストークが注目されており、我々は高血圧の発症・進展における制御性T細胞の役割を示した。心不全においてより顕著になる炎症・交感神経活性化につながる重要な観察である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
収縮機能不全、拡張機能不全それぞれに対する実験動物モデルにおいて交感神経活性化を生じる機序解明と予後改善やリモデリング抑制効果など病態と結びつけた知見を着実に得ている。また、国際学会などでの動向をみると我々の着眼点が注目されていること、世界の研究として広がりつつあることを実感している。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度実施した研究成果を論文作成し、査読者のコメントに基づき必要な追加実験を加え論文化する。その他、現時点で研究計画としては順調に進んでおり、特に問題はない。
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