研究課題/領域番号 |
24390203
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
北風 政史 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究開発基盤センター, 部長 (20294069)
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研究分担者 |
浅沼 博司 京都府立医科大学, 医学研究科, 准教授 (20416217)
朝倉 正紀 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究開発基盤センター, 室長 (80443505)
山崎 悟 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (70348796)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | アデノシン / 心不全 / トランスレーショナル研究 |
研究概要 |
DPP-4阻害薬が心不全改善効果を有するのか、またその効果に血中アデノシン増加が関係するのか、さらに血中アデノシン増加のメカニズムを明らかにしてDPP-4阻害薬による新しい包括的心不全治療法を開発するため、本年度は詳細な血行動態の評価が可能な大動物(ビーグル犬)急性心筋梗塞モデルを用いてDPP-4阻害薬の心筋梗塞サイズ縮小効果を検討した。ビーグル犬を麻酔開胸し、冠動脈左前下行枝(LAD)を頸動脈からの体外循環バイパスチューブで選択的に灌流し、90分間完全閉塞・6時間再灌流による心筋梗塞サイズを評価した。心筋梗塞サイズに影響を及ぼす可能性がある梗塞危険領域のサイズやマイクロスフェアー法で測定した側副血流量には差が認められなかったが、DPP-4阻害薬投与群は無投薬の対照群に比し有意に心筋梗塞サイズが縮小した。DPP-4阻害薬の梗塞サイズ縮小のメカニズムとして、体内に広く分布するDPP-4-ADA(アデノシン分解酵素)complexに対し、DPP-4阻害薬がADAに作用してADA酵素活性を低下あるいはアデノシン濃度の増加を惹起するか否かについてDPP-4-ADAcomplexを発現しているU937細胞にて検討した。U937細胞にアデノシンを添加し、DPP-4阻害薬を供投与した場合と供投与しなかった場合において細胞上清のアデノシン濃度をLC/MSを利用したアデノシンの高感度測定法により検討を行ったが差が認められなかった。これらの結果より、急性心筋梗塞モデルにおいてDPP-4阻害薬は梗塞サイズを縮小させるものの、そのメカニズムとして現時点では、アデノシンやADA(アデノシン分解酵素)の産生増加以外のメカニズムであることが考えられた。現在、急性心筋梗塞モデルで得られた心筋サンプルのDNAマイクロアレイ法による網羅的な遺伝子発現の解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先に提出した交付申請において、当該研究課題である「DPP-4阻害薬によるアデノシンの心血管保護を介した新しい心不全治療の開発」を遂行するために、平成24度は、大動物実験プロトコールとして、DPP-4阻害薬の心不全改善効果の検討を実施計画に掲げた。現在までに、前述の研究実績の概要に示すように、当初の計画通り、大動物(ビーグル犬)を用いた急性心筋梗塞モデルのプロトコールを実施し、DPP-4阻害薬による心筋梗塞サイズ縮小効果を明らかにしたことから、おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
当該研究課題である「DPP-4阻害薬によるアデノシンの心血管保護を介した新しい心不全治療の開発」を遂行するために、今後、大動物(ビーグル犬)を用いた狭心症(虚血性心不全)モデルおよび右室高頻度ペーシング(非虚血性心不全)モデルの双方の心不全モデルにおいて、DPP-4阻害薬の心不全改善効果の検討を行う。得られた心筋サンプルのDNAマイクロアレイ法による網羅的な遺伝子発現の解析と特定遺伝子のプロファイリングを行い、特定遺伝子のin vitroとin vivoでの機能解析を行うことで、DPP-4阻害薬によるアデノシンの心血管保護を介した新しい心不全治療の開発をめざす。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に得られた心筋サンプルのDNAマイクロアレイ法による網羅的な遺伝子発現の解析を予定していたことから予算を計上していたが、次年度に行うこととしたため、次年度使用助成金が生じることとなった。次年度は、大動物(ビーグル犬)を用いた狭心症(虚血性心不全)モデルおよび右室高頻度ペーシング(非虚血性心不全)モデルの双方の心不全モデルにおいて、DPP-4阻害薬の心不全改善効果の検討を行う予定としているが、プロトコールを完遂するためには、実験の効率の改善を図り、1度の実験で複数の個体の検討を行う必要があることから、実験動物人工呼吸器(1台)を計上した。
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