研究課題
自律神経系は、種々の疾患においてその発症・病態・予後・治療に密接に関係していることが明らかになっている。本研究では、内因性ペプチドホルモンであるグレリンの自律神経調節作用を実験動物およびヒトにおいて明らかにし、自律神経が病態を大きく修飾する疾患におけるグレリン投与効果を検証する。本年度は、以下の成果を得た。心筋梗塞モデル動物の冠動脈閉塞急性期に経口投与可能なグレリン受容体刺激薬であるヘキサレリンを一回投与することで慢性期の心機能が有意に改善した。また、ヘキサレリン投与群では、血中ノルエピネフリンとドーパミン濃度の増加が抑制されており、また心拍変動解析からみた交感神経の抑制を伴っていた。これらの結果より、グレリン受容体刺激薬の経口単回投与の自律神経調節を介した心臓保護効果が証明された。次に、内因性グレリンの自律神経活性に及ぼす生理的・病態生理的意義を検討する目的で、グレリン遺伝子を欠損したマウスに心筋梗塞モデルを作製し、心拍変動解析を用いて心臓自律神経活性におけるグレリンの生理的・病態生理的意義を検討したところ、慢性期の生存率が野生型動物に比較して有意に低下しており、交感神経の異常な活性化を伴っていた。また、このグレリン欠損動物の心筋梗塞後の表現型は、β遮断薬やグレリンの投与により野生型動物と同程度に回復した。さらに、健康成人に対するグレリン静脈内投与の心臓自律神経機能に与える影響と安全性を検討する臨床試験を施行し、グレリン投与の安全性と交感神経抑制効果を人においても証明した。これらの事実より、胃から分泌されるホルモンが末梢神経求心路と延髄を介して心血管系を制御するというユニークな‘消化管-神経-心臓連関’を証明した。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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