研究課題
基盤研究(B)
研究の目的:IgG型自己抗体が自己免疫性肺胞蛋白症の病因であり、その産生亢進の原因を突き止めることが本研究の狙いである。次世代シークエンサーの活用によりGM-CSF自己抗体をB細胞受容体にもつ抗体H鎖、L鎖可変領域のmRNA遺伝子配列の解析から、利用レパトアのプロファイリングと体細胞突然変異の頻度を患者と健常者の間で比較し、結合親和性と中和能が高いIgG抗体が産生される機構を解明する。研究実施計画:新潟大学医学部遺伝子倫理委員会の承認を得て、健常者、自己免疫性肺胞蛋白症患者5人ずつより末梢血を採取し、抗体重鎖、軽鎖mRNA配列の一挙解読を行い、(1)CDR1/2の配列から体細胞突然変異の頻度、(2)CDR3の配列からパラトープの解析を行った。結果 : 末梢血PBMCより、ビオチン化GM-CSFを用いて膜型GM-CSF自己抗体陽性B細胞をソートし、RNA抽出し、cDNAを作製した。次にcDNAをtemplateとして、抗体重鎖可変部のPCRampliconを被験者毎に得て、定量し、次世代シークエンスにかけた。患者5人から54970 reads、健常者5人から68213 readsのシークエンスが得られ、ソフトIMGTにかけたところ、IgG : 患者6480 reads 健常者3331 reads IgM : 患者40593 reads 健常者19273 reads、つまり、IgM型とIgG型の割合は、患者、健常者ともに6:1であり、頻度は変わらないことがわかった。シークエンスをIgM型とIgG型の間、また、患者と健常者の間で比較したところ、患者、健常者ともにIgG型とIgM型のシークエンスには顕著な差がみられる。CDR1,2の変異率はIgGが圧倒的に高い。患者、健常者ともにほぼ等しい割合で、IgG型とIgM型のシークエンスを持つ。IgG型とIgM型はことなるgermline alleleの組み合わせを使っていることがわかった。患者と健常者の間には、超可変部CDR1,2,3の差がみられなかった。・IgG型自己抗体で、J領域のアミノ酸数が患者の方が健常者よりも優位に多かった。これは、体細胞超変異のためではなく、選択されるJ領域のgermline alleleの種類が異なるためであることがわかった。などの所見がみられた。
1: 当初の計画以上に進展している
バイオインフォマティクスのソフトIMGTを活用でき、それにより、GM-CSF自己抗体重鎖のアリル解析、各領域の変異解析、CDR3領域のパラトープ解析が容易になった。
現在は患者5人、健常者5人のみの配列解析であるが、それをさらに10~15人ずつ増やすことで、より精密な解析をめざす。また、患者をさらに20名解析することで、パラトープと重症度との関連を明らかにしていきたい。
次年度に次世代シークエンサーの解析を行う。
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