研究課題/領域番号 |
24390208
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
中田 光 新潟大学, 医歯学総合病院, 教授 (80207802)
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研究分担者 |
田澤 立之 新潟大学, 医歯学総合病院, 准教授 (70301041)
中垣 和英 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 准教授 (90143635)
井上 義一 独立行政法人国立病院機構(近畿中央胸部疾患センター臨床研究センター), 臨床研究センター, センター長 (90240895)
根井 貴仁 日本医科大学, 医学部, 助教 (30597670)
瀧澤 淳 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (70463990)
横崎 恭之 広島大学, 保健管理センター, 准教授 (80210607)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 肺胞蛋白症 / 抗GM-CSF自己抗体 / 抗体H鎖可変部 / 次世代シークエンス |
研究概要 |
自己免疫性肺胞蛋白症の病因物質が患者の肺にあるGM-CSF自己抗体であることは、これまでの研究から明らかであるが、自己抗体が何故過剰に産生されるか未解明のままである。本研究は、これらの問題を解明するのが目的である。被験者は新潟大学医歯学総合病院生命科学医療センターの症例で、検体は新潟大学医学部の遺伝子倫理委員会の承認を得て、新潟大学で遺伝子解析した。この研究は、新潟大学医学部遺伝子倫理委員会の承認を受け、被験者の文書同意を得た。患者5人、健常者5人の末梢血からGM-CSF自己抗体産生細胞のcDNAを得てH鎖可変部のPCR産物を次世代シークエンスにより、12万クローンの配列を解析した。患者も健常者も低親和性のIgM型自己抗体を産生するB細胞が同頻度にあるが、IgG型自己抗体を産生するB細胞は患者に増加していることが見出された。IgM型とIgG型自己抗体H鎖のgermline Allele Usageが一致しないことから,2者のクローンは異なる起源のB細胞から分化していると思われる。CDR-1、CDR2領域について抗体遺伝子解析ソフトより解析した配列情報についてClustalW2のKimura Methodで樹形図を作成した。CDR-1について全体として患者でクラスターを形成する傾向が見られた。またCDR-2については重症疾患群で顕著なクラスターを形成し、軽症患者については健常者と同じクラスターに属する例も見られた。以上のことから、患者及び健常者の末梢血中の自己抗体産生細胞から抗体重鎖の遺伝子を得て、次世代シークエンス解析することが可能であり、患者でも健常者でもIgG型クローンが存在することから、両者でクラススイッチが起こっていることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初困難であると思われた抗体遺伝子の精製とcDNA作製に成功し、10例の被験者全員から抗体重鎖のPCR産物を得ることができた。また、次世代シークエンスのデータが12万クローンもあったが、抗体遺伝子解析ソフトIMGTの活用により、重鎖のV,D,J領域の詳細な解析が可能となった。以上から研究の課題であった方法が全て解決した。
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今後の研究の推進方策 |
自己免疫性肺胞蛋白症の難治化要因として、一義的に自己抗体のエピトープやavidityが関連していると考えている。それらを決定しているのは、抗体の一次構造であると思われる。39例の自己免疫性肺胞蛋白症の重症度や血清マーカーのデータ、及び自己抗体の濃度、avidity, kappa/lambda ratio, 中和能のデータを全て入力したデータベースを作成し、それらの患者の保存PBMCより、GM-CSF自己抗体産生B細胞をソートし、RNA抽出cDNA作製、重鎖のPCR産物、軽鎖のPCR産物を得て、次世代シークエンス解析を行う。L鎖では、重症化により、λ鎖の割合が増えることを見いだしており、特定のクローンの増殖がないかどうかを検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
39検体の抗体メッセンジャーRNAの精製と、それをtemplateとして、SMARTシステムによりcDNAを作製するのに、相当額の予算を残しておく必要があった。また、次世代シークエンスを行うのに35~70万円を要すると見積もられているため、26年度に基金を上乗せして計上した。 平成25年度までに39例の自己免疫性肺胞蛋白症の年齢、性別、重症度, 動脈血酸素分圧や血清マーカーのデータ、及びIgG型、IgM型自己抗体の濃度、avidity, kappa/lambda ratio, 中和能のデータを全て入力したデータベースを作成した。26年度は、それらの患者の保存PBMCより、GM-CSF自己抗体産生B細胞をソートし、RNA抽出cDNA作製、重鎖と軽鎖のPCR産物を得て、次世代シークエンス解析を行う。重症化により、κ/λ比が減少することを見いだしており、特定のクローンの増殖がないかどうかを検討する。25年度までと異なり、26年度では、IgG型B細胞のみをソートし、そこからGM-CSF自己抗体陽性B細胞を得て、cDNA作製、PCR amplicon作製・精製を経て、次世代シークエンス解析、bioinformatics toolにより、L鎖とH鎖別々に解析する。
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