研究課題
平成25年度の研究実施計画に沿って研究を進めた。平成24年度に引き続き抗ポドプラニン抗体NZ-1およびそのヒトキメラ抗体NZ-8を用いた検討を行った。その結果、免疫組織染色法においてNZ-1およびNZ-8は他の抗ポドプラニン抗体であるD2-40と比較して、胸膜中皮腫の腫瘍細胞に発現するポドプラニンを認識しやすい傾向にあり、正常組織である肺胞上皮細胞や腎臓のポドサイトを認識しなかった。また、Western blotting法による検討では検出されるポドプラニンのバンドのパターンが異なっていたことから、NZ-1およびNZ-8は比較的特異的に腫瘍細胞に発現するポドプラニンを認識する特徴を持っており、臨床応用を考えた場合に有利な特性であると考えられた。また、SCIDマウス皮下移植悪性胸膜中皮腫腫瘍の実験系を用いて、蛍光標識したNZ-1をマウス尾静脈投与することにより、皮下腫瘍へのNZ-1の高い集積性を確認した。さらにSCIDマウスの同所移植モデルを用いて、NZ-1およびNZ-8を用いた治療と抗がん剤(ペメトレキセド)との併用効果を検討した結果、抗がん剤との併用により抗腫瘍効果の増強が認められた。一方、腫瘍へのエフェクター細胞、特にNK細胞の集積に関わる因子の同定のため、SCIDマウス皮下移植腫瘍モデルにおいて、NZ-1投与後の胸膜中皮腫腫瘍を用いてDNAマイクロアレイ解析を行い、現在解析中である。また、悪性胸膜中皮腫の同所移植モデルにおいて形成される悪性胸水中には、CD11b+Gr-1+のmyeloid-derived suppressor cellsの集積を確認した。今後、antibody-dependent cellular cytotoxicity 活性への影響を検討する予定である。
2: おおむね順調に進展している
当初の研究計画として平成25年度以降に予定していた研究計画の中で、①抗HM1.24抗体および抗ポドプラニン抗体の正常細胞および組織への結合の検討、②抗HM1.24抗体および抗ポドプラニン抗体と抗癌剤の併用効果の検討がある程度終了した。研究実績の概要に記載したように、ポドプラニン抗体は肺、腎等いくつかの正常組織にも発現しているものの、我々の使用しているNZ-1、NZ-8の特性として正常組織に発現するポドプラニンを認識しにくい特徴があることが明らかとなった。さらに、抗がん剤との併用治療実験において、有意な併用効果が確認された。また、研究計画③肺癌および胸膜中皮腫組織における骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)の検討、④抗HM1.24抗体および抗ポドプラニン抗体のADCCに及ぼす骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)の効果の検討についていくつかの結果が出つつある。今後、重要な検討項目として⑤抗HM1.24抗体および抗ポドプラニン抗体治療下のマウス移植腫瘍での遺伝子発現の網羅的マイクロアレイ解析、⑥マイクロアレイで同定された分子の腫瘍組織における発現の検討が残っている。現在⑤を実施し候補遺伝子の探索を進行中であり、平成26年度にスクリーニングを行いいくつかの候補遺伝子を絞り込む予定である。
平成26年度は、⑤抗HM1.24抗体および抗ポドプラニン抗体治療下のマウス移植腫瘍での遺伝子発現の網羅的マイクロアレイ解析、⑥マイクロアレイで同定された分子の腫瘍組織における発現の検討を中心に実験を進める。一方、悪性胸膜中皮腫の手術組織検体を用いた臨床研究を計画している。複数の臨床検体を用いることが可能であれば、倫理委員会で承認の後、免疫抑制細胞としての制御性T細胞(Treg)やMDSCの浸潤を免疫組織染色により検討し、予後などの臨床パラメーターとの相関を検討する予定である。同時にTreg、MDSCのADCCに及ぼす作用をin vitroで検討したい。
既に発注済みであり、支払が4月以降になるため次年度使用額として計上されている。既に使用済み。
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