研究課題/領域番号 |
24390212
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
野入 英世 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (00301820)
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研究分担者 |
徳永 勝士 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40163977)
土井 研人 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (80505892)
浜崎 敬文 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (20617774)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ネフローゼ症候群 / ヘパラン硫酸プロテオグリカン / 蛋白尿 / 膜性腎症 / HLA |
研究概要 |
難治性ネフローゼ症候群(ネ症)は本邦では頻度の高い疾患であり(推定患者数約3 万),種々の病態生理により最終共通経路である大量の蛋白尿を呈するに至る.従って,ネ症には大量蛋白尿制御と疾患発症制御の2 方向からのアプローチが必要である.研究チームは,前者の観点からネ症患者を対象にゲノムワイド関連解析(GWAS)を行い,fibroblast growth factor(FGF)作用を修飾する2遺伝子(グリピカン[GPC],スルファターゼ[SULF])を疾患感受性遺伝子として同定した.さらに,糸球体上皮細胞特異的にGPC5 遺伝子発現を減弱させると,マウスネ症モデルにおいて蛋白尿を大幅に低減できることが判明し,膜型機能性ヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)の一つであるGPC5 の重要性を世界で初めて証明した(Nat Genet 43:459, 2011).更に,SULF 及び疾 患感受性遺伝子Gene X(オッズ比3 以上,genomewide significance)を得ておりさらに研究を進める必要がある.疾患発症の観点からは,近年PLA2R とHLA-DQ1 がネ症の一角を占める膜性腎症発症に強く関与することが欧米より報告されたことを踏まえ,本研究では研究チームの保有するゲノム検体を用いて遺伝子多様性を検討し,本邦でのネ症疾患感受性遺伝子,重症化や組織学的変容を惹起する多様性を検証する.本研究によりネ症の発症様式への理解を深め,最適な蛋白尿制御法,疾患制御に結びつく診断指標の発見を最終目標とする.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SULFに関するゲノム解析を終了し、疾患感受性遺伝子であることを突き止め、更に機能解析としてSULFの遺伝子欠損動物によるデータが集積しつつあるから。
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今後の研究の推進方策 |
SULFの遺伝子上流部分の解析によりGenome wide significanceを満たす候補遺伝子をハプロ解析により見いだしたことを受けて、機能解析へと進んでいる。 昨年度末にSULFのBDF1系統での遺伝子欠損マウスの樹立に成功した。BDF1はC57/B6及びDBA2において7世代の交配の後にF1としする手間を充分にかけた手法で樹立した。この動物を用いたマウスネフローゼモデルの解析が現在進行しており、一定の結果を得つつある。また、SULFの下流のシグナルに関する解析も進みつつある。 一方、日本人のネフローゼ症候群のなかでも、PLA2が関与しているのは膜性腎症のみであることを確認した。膜性腎症ではHLAの関わりが深いことが以前より知られているが、HLAの充分なタイピングはこれまで実施・報告されたことがないため、本年度その点について検討を深める方針である。
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