1.腎糸球体ポドサイト特異的RhoGDIα KOマウスと同Rac1 KOマウスを作製し、ポドサイト障害を自然発症することを見出し、その分子機序を明らかにした。前者にはRac1過剰活性化、鉱質コルチコイド受容体(MR)活性化が関与しており、糖尿病やメタボリックシンドローム、高血圧などの病態モデルにおける足細胞障害と類似しており、Rac阻害薬やMR拮抗薬が有用であった。後者ではMRシグナルは低下しており、MR拮抗薬は無効で、異なるメカニズムの関与が示された。 2.培養ポドサイト細胞株においてRac1活性を変化させると、Rac1活性化により細胞のmotilityが亢進し、Rac1 knockdownではmotilityが低下した。また、局所におけるRac1活性を検出することに成功し、活性化部位にフォーカスしてその形態機能解析を進めたところ、cortical F-actin ring形成、リン酸化カスケードの賦活化などを見出した。また、Rac1活性とMRの間に相関が認められた。 3.ポドサイト特異的GR KOマウスを作製したところ、通常飼育下ではポドサイト障害を発症しなかった。一方、LPSによるポドサイト障害はKOマウスで軽微であり、GRがポドサイト障害機転において障害性に働くものと考えられた。GRシグナルの標的遺伝子も同定しており、腎障害におけるGRの、抗炎症とは異なる新たな役割を明らかにすることができた。ネフローゼ症候群に対するステロイド治療時に、このポドサイトGRシグナルがどのように影響を受けるかについては臨床的にも重要な問題であり、今後さらなる検討を要する。 4.マクロファージ特異的Rac1 KOマウス、MR KOマウスを用いて腎障害モデルを作製し、浸潤マクロファージにおけるRac1-MR系のクロストークが炎症性サイトカイン産生を介して腎障害の炎症機転に寄与することを示した。
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