研究課題
腎尿細管輸送体は尿生成における水電解質輸送を担うことで体液恒常性を維持している。輸送体の機能異常により尿崩症、高血圧、尿細管性アシドーシスなど様々な体液調節異常をきたすため、治療法開発のターゲットとして重要である。近年、多くの腎尿細管輸送体は複合体を形成し、その複合体全体およびその内部の分子動態と相互作用が輸送体の機能制御に重要であることが明らかになってきた。本研究では水チャネルなどの腎尿細管輸送体が形成する複合体の分子機序を解明し体液調節異常疾患の新規治療法開発のターゲットメカニズムを明らかにする。本年度においては主に輸送複合体の分子制御特性を調べた。その結果、水チャネルAQP2が自身の細胞内輸送の駆動力発生に関与していることを発見した。
2: おおむね順調に進展している
水チャネルAQP2の細胞内輸送について輸送経路を形成する機序について本研究開始前に明らかにしてきたが、輸送の駆動力が発生するメカニズムは不明であった。本研究開始により、今同初めて解明することに成功した。
引き続き培養細胞でAQP2が輸送の駆動力を発生させる機序を検証する。AQP2複合体を構成する各分子について蛍光タンパク融合タンパク質の安定発現細胞の作成を腎尿細管由来のMDCK細胞を用いて行い、局在と相互作用の解析を行う。複合体分子のうち特にミオシン調節軽鎖については、その2ヶ所のリン酸化部位の1重リン酸化、2重リン酸化および非リン酸化変異体の安定発現細胞を用いてconfocal顕微鏡や管腔側細胞膜表面標識を行いAQp2が駆動力発生に関与する機序を検証する。さらにラット腎でENaC複合体およびV-ATPase複合体それぞれの構成分子の同定を進め、培養細胞とプロテオリポソーム再構成系で制御機序の解明を進める。
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