研究課題/領域番号 |
24390218
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
柏原 直樹 川崎医科大学, 医学部, 教授 (10233701)
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研究分担者 |
佐藤 稔 川崎医科大学, 医学部, 講師 (70449891)
春名 克祐 川崎医科大学, 医学部, 講師 (40341094)
桑原 篤憲 川崎医科大学, 医学部, 助教 (50368627)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | アルブミン尿 / 内皮障害 / eNOS / 糸球体 / 慢性腎臓病 / 心血管病 / 糖尿病性腎症 |
研究概要 |
慢性腎臓病CKDは脳卒中、心疾患等の心血管病の独立した、かつ強力なリスク因子である。とりわけアルブミン尿はごく微量段階から心血管病と強く連関している。血管障害の最早期病態は内皮(機能)障害と微小炎症である。それ故、アルブミン尿が内皮障害を反映していると想定されてきたが、詳細は不明であった。 まず、研究技術上の隘路であった腎内微小循環動態、透過性変化を生体において直接可視化し解析しうるin vivo imaging技術を確立に取り組み、2光子レーザー顕微鏡と蛍光標識probeを用いラット、マウスの腎内微小血流、透過性変化を可視化するin vivo imaging法を確立し得た。 本技術も駆使して、アルブミン尿出現の分子機序、内皮障害の役割を解明に取り組んだ。その結果、CKD糸球体においてeNOS機能異常(eNOS uncoupling)が生じていることを見いだした。eNOSとその補酵素BH4産生の律速酵素GTP- cyclohydrolase I(GTPCH-1)がcaveolae内に存在する。GTP-CH1過剰発現マウスに糖尿病モデルを作成(AKITAマウスと交配)したところ、アルブミン尿の発現抑制効果を認めた。GTP-CH1活性調整にPKAが関与することも判明し、metoforminがGTP-CH1活性を活性化し、アルブミン尿抑制効果を有することも判明した。 疾患腎糸球体内皮においては、転写因子NF-kBが活性化しており、微小炎症(インフラマソーム活性化)の出現に関与することも判明した。 糖尿病、高血圧等の生活習慣病関連CKDにおいては、内皮障害が生じており、アルブミン尿出現の主病態を形成していることが判明した。以上の様に本研究によりCKDとCVD連関機序に関して、理解を深化させることに成功し、治療標的候補を顕在化し得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝子改変動物(GTPCH-1C、NOX2トランスジェニックマウス)を用いた実験研究の結果をとりまとめ、論文執筆中である。これら論文の投稿、受理、公表を急ぎたい。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの2年間で研究課題の主要部分は順調に進捗し、以下の課題解決に向けて、現在精力的に研究に取り組んでいる。 1.病態腎糸球体における内皮特異的遺伝子発現変化の解析:Tie2 promoter下で内皮特異的に蛍光色素遺伝子GFPを発現するTie2-GFPマウスを用いる。糸球体を単離し、FACSによりGFP陽性細胞をsortingしGECを選択採取する。GECで発現するmRNAをmicroarray解析し、GEG特異的発現遺伝子を解析する。また本マウスに病態モデルを作成し、病態腎GECにおける遺伝子発現変化を解析する。 2.糸球体内皮障害と上皮障害のcross-talkの検討:糸球体内皮障害が起因となり、上皮障害へと波及する可能性を検討する。病態モデルにおいて、内皮障害と上皮障害を経時的に解析する。 3. CKDと心血管病、脳卒中との連関機序の解析:CKDモデルのaorta標品を用いて、内皮依存性血管拡張反応を評価する。CKDは認知機能障害のリスク因子でもある。認知機能障害には脳内微小循環障害が関与することが示されている。2光子レ-ザ-顕微鏡を用いて小動物の大脳皮質の微小循環動態や透過性変化を可視化、解析する方法を開発しており5/6腎摘モデルで検討する。 4.母胎環境がCKD発症に及ぼす影響の解析:母胎内環境や出生時体重、出生早期の栄養環境が生後のネフロン数、CKDの発症に影響することが示されている。妊娠ratを用い妊娠後期14~21日間、8%低蛋白食あるいは50%カロリー制限を加える。出生仔腎のネフロン数計測、高食塩食負荷時の血圧変化(食塩感受性)、内皮機能の評価を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度内に予定していた遺伝子改変動物を用いた実験が、遺伝子改変動物の繁殖速度の関係で26年度に持ち越された。 26年度の予算と合わせて、試薬の購入と成果発表および情報収集のための旅費に使用する予定である。 当初の研究計画に基づき粛々と実施する。今後の研究に必要な遺伝子改変動物の準備も順調に進行している。本件研究着手に先行して数年来、予備実験、準備を継続しており、これまでのところ、格段の研究上の支障には遭遇していない。
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