研究課題
先行研究において我々は、重度の嗅覚低下がパーキンソン病認知症の発症を予測する最も良いバイオマーカーであることを明らかとした(Brain 135:161, 2012)。さらに本邦で独自に開発されたプローブであるBF-227により、世界で初めてヒト脳内のαシヌクレイン沈着を画像化することに成功した(Brain 113:1772, 2010)。本研究では、BF-227による生体脳分子イメージングの技術をパーキンソン病にも応用し、その脳内陽性シグナルの分布を検討した。さらに同一症例でPIB-PETを施行し、アミロイドの沈着との差異を検討した。その結果、パーキンソン病に於けるシヌクレイン沈着様式に大きく2つのパターンがある可能性を示唆するデータが得られた。全体の約半数はほとんどBF-227の脳内集積を認めなかった(低集積群)が、残りの半数は、大脳皮質の広範な領域に集積を認めた(高集積群)。特に大脳辺縁系への集積が顕著であり、これらはレビー小体型認知症に於けるレビー小体の分布に類似するものであった。パーキンソン病に於けるレビー小体病理の進展様式には、脳幹を主とするものと嗅球や大脳辺縁系を中心とするものの二つの進展経路があり、前者は運動症状や自律神経症状に関連し、後者は嗅覚低下や認知機能低下に関係すると言う仮説が、これまでの病理学的検討や臨床的な縦断研究から示唆されて来ているが、今回の結果はこうした考えと良く一致するものと言える。
2: おおむね順調に進展している
重度嗅覚低下を来たし後に認知症に至った症例についてvolumetric MRIにて更に詳細な検討を進めたところ、認知症発症例に特異的な脳萎縮パターンを確認しつつある。またパーキンソン病認知症とコリン系の低下についてdonepezil PETを用いて明確な関連性を示すことに成功した。これらの結果から重度嗅覚低下が、パーキンソン病に於けるコリン系低下のバイオマーカーとなり得るとの仮説を立て、これを実証すべくドネペジルによる治療介入試験を企画し、全国22施設で平成25年度より実施した。3月末までに予定の200例に対して90%以上の登録を完了し、観察期間に移行している。
重度嗅覚低下を来したパーキンソン病症例のデータをさらに蓄積するとともに、並行して治療介入試験を進める。炭酸ガス応答性についてもデータが蓄積しつつあり、認知機能・脳画像・嗅覚等との関連について解析を進める。脳画像解析と症例データの蓄積を図る。パーキンソン病群に於けるコリン系低下と嗅覚低下に関連を直接的に示す。これらの研究を継続しつつさらに、症例データの蓄積とシヌクレインの細胞内蓄積パターンを詳細に解析するための細胞モデルの構築を進める。次年度使用額は。今年度の研究を効率的に推進したことに伴ない発生した未使用額であり、平成26年度請求額とあわせ、平成26年度の研究遂行に使用する予定である。
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴ない発生した未使用額である。平成26年度請求額とあわせ、平成26年度の研究遂行に使用する予定である。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件)
BMJ Open
巻: 3 ページ: e002249
10.1136/bmjopen-2012-002249
Neurology and Clinical Neuroscience
巻: 1 ページ: 189-194
10.1111/ncn3.57