研究課題
先行研究において我々は、本邦で独自に開発されたβシート構造検出プローブであるBF-227により、世界で初めてヒト脳内のαシヌクレイン沈着を画像化することに成功した(Brain 113:1772, 2010)。本年度はシヌクレイノパチーの代表的疾患である多系統萎縮症に於いて、BF-227の陽性所見が経時的にどの様に変化するのかを主に検討した。先行研究に於いてBF-227の陽性所見が得られた症例の内、経時的な検査施行が可能であった4例について、2~3年の間隔を置いて同検査を再検した。対象となった4例のMSA-C患者はいずれも正常コントロール群と比較して、レンズ核、大脳白質、前頭葉から頭頂葉かけての大脳皮質において[11C]BF-227の集積亢進を認めていたが、いずれの症例においても、これらの領域の[11C]BF-227集積は経時的に病期の進行とともに増加・拡大していった。以上から[11C]BF-227 PETによって生体脳内αS蛋白凝集体の蓄積量を経時的に測定できることを示すことができたと考えられた。また[11C]BF-227 PETが病期進行や治療効果の判定としてのサロゲートマーカーに応用できる可能性があると思われた。
2: おおむね順調に進展している
パーキンソン病や多系統萎縮症などシヌクレイノパチーの分子イメージング技術の確立に向けてデータが蓄積されている。しかしPET検査の割り当てに制限があり、検査の試行回数にやや制限がある。
重度嗅覚低下を示したパーキンソン病症例を対象としたドネペジルの治療介入試験は引き続き継続する。BF-227によるシヌクレイノパチーの分子イメージング技術についても引き続き症例の蓄積を図る。今後さらにパーキンソン病に於ける認知症発症のリスク要因を引き続き検討するとともに、PETによる脳脳代謝、MRIによる脳萎縮評価、BF-227による分子イメージングを組み合わせて解析を進める。
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴ない発生した未使用額である。
平成27年度請求額とあわせ、平成27年度の研究遂行に使用する予定である。
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