研究概要 |
急性期脳虚血、虚血耐性時、神経細胞においてはTORC1が高発現しており、ミクログリア、血管内皮ではTORC2,3が主に発現していた。SIK1,2はTORC-CREBシグナルを主に調節しているのに対して、SIK3はTORC-CREBシグナルに加えてclass2-HDAC(神経細胞ではHDAC4,9)をリン酸化していた。このシグナルは神経系においてはClass1HDAC(HDAC1,2,3)とも相互に関連していることがわかり、神経疾患においてはHDAC1,2,3の役割が各病態時で異なることが分かった。これらの分子メカニズムとともに、神経疾患への治療に繋がる低分子化合物の探索も並行して施行した。各種薬剤ライブラリーの探索からTORC活性化剤、SIK選択的阻害剤、HDAC各アイソフォーム阻害剤を抽出し、とりわけどのようなHDAC阻害剤が神経保護効果をもたらすとともに、神経毒性が低いかの構造一活性相関を見出した。in vitro ischemia(OGD),パーキンソン病モデルであるMPTPモデル、カイニン酸毒性において、どの様なHDACを阻害することが、より神経保護に繋がるかを決定した。更に、各種遺伝子改変マウスも並行して作成しているが、TORC1KOマウスを作成したところ、既報とは異なり、着床不全が存在したため、多くがheterozygous TORC KOマウスとなっており、行動学的に、TORC1ヘテロノックアウトマウスにおいても軽度の表現系を認めたが、脳におけるTORC1の重要性を更に詳細に検討するために、現在Cre-LoxPシステムを用いて、脳特異的TORC1欠損マウスを作成しており、今後、上記にて抽出された薬剤の効果も含めて、更にTORC,HDAC病態時における役割とともに、低分子化合物の探索、治療への応用を模索していく。
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