研究課題/領域番号 |
24390222
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
佐々木 勉 大阪大学, 医学部附属病院, 助教 (20534879)
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研究分担者 |
北川 一夫 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70301257)
竹森 洋 独立行政法人医薬基盤研究所, 創薬基盤研究部, プロジェクトリーダー (90273672)
長岡 康夫 関西大学, 工学部, 教授 (90243039)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | エピゲノム / HDAC / TORC / 低分子化合物 / 神経疾患 |
研究概要 |
1.神経細胞において高発現しているCREB特異的coactivatorであるCRTC1をリン酸化するキナーゼのSIKにはSIK1,2,3が存在するが、SIK1,2,3の各KOマウスにおける検討を行った。その結果、SIK1KOマウスはWTに比して神経障害が増悪し(脳梗塞サイズの拡大)、他方、SIK2KOでは神経保護であった。またSIK1,2ダブルKOマウスでは、SIK2KOの神経保護効果は相殺された。SIK1は、SIK2と異なり、脳虚血後に、その発現が一過性に上昇するが、CREB活性化に対して自己抑制的に作用し、CREBが過剰に活性化することを抑制している。他方、SIK1,2各KOマウスから作製した初代ミクログリア、マクロファージからは、TNF-αなどの炎症促進性サイトカインなどは、SIK1KOでは上昇、SIK2KOでは抑制されており、SIK-CRTCシグナルが脳虚血後の炎症に寄与することが判明した。またGene-Chipを用いて網羅的な解析を施行し、SIK1KOにおいて神経障害に寄与しうる因子を複数抽出できた。 2.我々は独自のHDAC阻害剤ライブラリー(isoform特異的HDAC阻害剤)より、脳虚血、パーキンソン病モデル(in vitro,in vivo)に対して有用な,新規HDAC阻害剤の同定に成功した。この新規HDAC阻害剤は、神経病態により多様なアポトーシスをはじめ多様な神経細胞死に寄与することも明らかとなり、HDAC阻害と神経細胞保護とに関与するシグナル経路を同定した。これらは現在特許出願準備中である。 3.CBPヘテロKOマウスの検討により、SIKとCBPのアセチル化ー脱アセチル化を調節している部位を新たに同定した。 4.脳虚血における、血管内皮細胞でのおけるCRTCの発現様式並びに、CRTC依存的なPGC-1αの調節、ERRαの下流因子の検討を施行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までのところ、SIK1,2,3各KOマウス、CBPheteroKOマウスにおける検討は、概ね順調に進行しており、SIK1KOにおける神経障害的なメカニズムなども、徐々に明らかになりつつあり、SIK2KO、或いはSIK3KOとの差異も、Gene-Chip解析などより網羅的な解析を施行し、候補遺伝子を同定、総合的には順調に進行している。ただし、脳特異的CRTC1KOマウスの作製が、CRTC1flox/floxマウスがうまくできず、現在その原因を調べており、そのマウス作製は、やや遅れている。 他方、独自のHDACライブラリーから、HDAC isoform特異的な新規HDAC阻害剤の同定に成功しており、この薬剤の脳への到達も既に検討ずみである。HDAC isoform特異性と細胞保護シグナルの関連性も、徐々に明らかになってきた。現在、特許出願準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
1.SIK1KO、SIK2KOの初代マクロファージ、初代血管内皮細胞を作製し、より細胞特異的なSIKーCRTCシグナル、class1,2HDACsの役割を明らかとする。SIK1/2ダブルKOマウスの表現系を更に解析するとともに、SIK選択的阻害剤を、多様なライブラリーから探索する。 2.抽出した新規HDAC阻害剤の神経細胞生存シグナルを更に検討し、この新規薬剤による影響もゲノムワイドに検討する。更に脳特異的HDAC欠損マウスを作製し、各HDACアイソフォーム毎の機能の差異を調べる。特にclass2 HDACは細胞質と核内を移行するが、そのHDAC活性は弱く、class1 HDACの活性を経て、そのHDAC活性を発揮することが知られている。このため、HDACドメイン欠損型、SIKによりリン酸化されないHDAC変異体での動態、細胞保護効果への影響を検討する。 3.神経系においてはCBP/p300の必要性が既に報告されているため、CBP hetero KOマウスと、各SIKKOマウス、CRTC1KOマウスとの、脳虚血などの病態における統合的解析を行い、アセチル化ー脱アセチル化の部位特定と、神経疾患における役割を詳しく検討する。 3.上記で抽出した、SIK阻害剤、新規HDAC阻害剤などの、各種遺伝子欠損マウスにおける検討と、脳機能再生過程として、脳虚血後の軸索伸展への効果を検討する。すでにSIK2KOマウスでは、著明に軸索伸展が促進されており、cAMP経路などとSIK-CRTC経路の関連性、軸索伸展効果の相関性を検討する。 4.抽出した新規化合物の神経保護効果を更に、増強するため、構造ー活性相関をとり、ヒトの神経疾患治療に向けた、更なる有効な薬物を合成し、その効果を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
脳特異的遺伝子欠損マウスの作製が、うまく進行せず、現在段階を追って原因を検索中であり、再度、ステップにわけて、脳特異的遺伝子欠損マウスを作製中で、マウスの作製の進行具合により、次年度使用金が生じた(マウス妊娠などの状況により左右されるため)。 また、一部、物品到着が遅れたため。 脳特異的遺伝子欠損マウスの作製費と、それに伴う飼育関連費用に使用することを考えている。 またベクター作製関連費用に使用する。
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