研究課題
抗MuSK( muscle-specific kinase)抗体で発症する重症筋無力症はAChR抗体で発症する重症筋無力症で使われている治療法に対してむしろ症状が悪化したり、さらに難治性で急速に筋萎縮に至る症例もあることから、MuSK抗体重症筋無力症に有効とされているステロイド以外の治療薬が求められている. そこで、本課題ではMuSK抗体で発症する重症筋無力症のモデルマウスを使い, 発症・病態メカニズムを明らかにして有効な治療薬・治療法の開発研究を行うことを目的としている. 申請者らが開発した疾患モデルマウスにおいては、MuSKの細胞外ドメイン蛋白を2回免疫すると、約1ヶ月で急速に体重が減少して筋萎縮と全身の筋力低下を伴う重症無力症を、100%の確率で発症するため薬物の効果判定と作用機序に適している. 申請者らは治療薬候補として放線菌から発見されたラパマイシンに注目して有効性を解析した. その理由としては、ラパマイシンは欧米では免疫抑制剤として、また我が国においても抗癌剤として認可されているため、疾患モデル動物に対する有効性が示されれば、臨床治験が比較的容易である. これまで得られた結果として, (1) 2回目の抗原免疫と同時にマウスに投与すると体重減少と筋力低下が顕著に抑制される. (2) 抗MuSK抗体値の上昇が抑制されること. (3) 筋電図所見として重症筋無力症で観察されるcompound action potentialの漸減反応が無く、電位幅も大きい. (4)発症したモデルマウスで観察される神経筋シナプスの病理学的な形態変化、すなわち運動神経終末の縮小とsprouting, およびアセチルコリン受容体の凝集減少が顕著に抑制されていた. 以上の結果から、ラパマイシンがMuSK抗体重症筋無力症に対して有効である可能性が強く示唆された.
2: おおむね順調に進展している
昨年度の目標として、TH2産生阻害剤とプロテアソーム阻害剤のin vivo投与による探索型の実験も計画していたが、ラパマイシンが顕著に有効である可能性を発見することができた。本年度はさらにその有効性を示す明確なエビデンスを得ることができた.
ラパマイシンの有効性について、疾患モデルマウスを使ったエビデンスをさらに蓄積する必要がある. また、作用機序についてもあわせて明らかにして論文発表を通して臨床治験の意義を提唱する予定である.
初年度計画に加え、新たな治療法(ラパマイシン)について顕著な有効性を見出しており研究計画に変更が生じたため。新たな治療法の臨床治験を可能にする報告を最終年度にあたる次年度できるよう使用計画を再構築した。
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