研究課題/領域番号 |
24390231
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
武城 英明 千葉大学, 大学院・医学研究院, 教授 (80291300)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 可溶性 / LR11 / 褐色細胞 / 分化 / 肥満 |
研究概要 |
本研究は、LR11^<-1->マウスにおける脂肪細胞トランスディファレンシエーション(白色脂肪の褐色脂肪への転換)の病態生理を同定しその分子機序を、それを過剰発現する白血病がん細胞やLR11が枯渇するアルツハイマー病神経細胞の機能とあわせて、解明し、これを修飾する創薬を探索することを目的とする。 1)脂肪細胞トランスディファレンシエーションモデル解析。A.エネルギー代謝の生理学的解析:高脂肪食摂取での体重変動、糖脂質代謝をLR11^<-1->マウスと野生型で比較解析した。高脂肪食負荷後、LR11^<-1->マウスは野生型に比べ有意に体重が少なく、内臓脂肪および皮下脂肪ともに減少していた。インスリン抵抗性が減弱していた。LR11^<-1->マウスの皮下脂肪に褐色脂肪が存在し野生型ではみられなかった。B.培養脂肪細胞の分化解析:マウス白色および褐色脂肪に由来前駆細胞の分化誘導反応遺伝子発現解析を行った。LR11^<-1->マウス由来白色脂肪細胞は褐色脂肪の分化に関わる遺伝子群の発現が誘導されていた。C.脂肪細胞遺伝子と機能の包括的解析:LR11^<-1->マウスの皮下脂肪からmRNAを抽出しアレイ解析を実施中である。2)骨髄移植後の血球分化解析。A.LR11^<-1->所および野生型マウスに白血病細胞株U937を移植し生存率を解析している。B.血球分化誘導因子によるLR11放出作用の解明:GCSF処理し骨髄および末梢血の単核球分化誘導の変動を解析した。GCSFは細胞からLR11^<-1->放出を誘導し、両者は協調的に血球細胞の内皮細胞におけるトランスマイグレーションを亢進させた。 以上より、LR11は脂肪細胞のトランスディファレンシエーションを抑制しこの破綻が褐色脂肪細胞への分化を誘導すること、血球細胞のGCSFに反応して末梢血に動員される過程で骨髄から末梢血へと血球が放出されるトランスマイグレーションに重要であることが明らかになった。来年度以降継続する分子解明は、脂肪細胞の褐色脂肪化を介した代謝疾患治療、血球細胞の動態調節を介した白血病治療に新たな治療法を提示することが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モデル解析から予想された病態変化とその起因となる遺伝子変化を検出したことから、計画通り包括的遺伝子解析へと移行することができた。また、初代培養をもちいたアッセイ系の樹立にも成功し、来年度これを用いた解析が予定に沿って行われる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の計画通りに、脂肪細胞のトランスディファレンシエーションおよび血球細胞動員モデルの樹立と細胞生物学的解析に着手したことから、次年度はこれらを用いた包括的な遺伝子発現解析とそれによる原因解明に着手する予定である。
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