研究課題
基盤研究(B)
網羅的遺伝子発現解析により、PGC1α新規アイソフォーム欠損マウスの骨格筋ではVLDL受容体、PPARα、ACOT1などの脂肪燃焼に関わる遺伝子の運動による発現増加が抑制されていることが明らかとなった。また、単離骨格筋の脂肪酸酸化能の検討により、本マウスではβアドレナリン刺激による脂肪酸酸化が抑制されていることも判明し、骨格筋の運動による脂肪燃焼の抑制不全が本マウスの代謝障害の原因の一つであると考えられた。また、本マウスではUCP3を始め熱産生に関わる遺伝子の発現が低下し、実際、運動時の体温上昇も抑制されていることも見出した。PGC1α新規アイソフォーム欠損マウスではなんらかの二次的影響により肝臓での遺伝子発現にも変化があることも明らかとなり、代謝表現型に影響を及ぼしている可能性が示唆された。そのため、肝細胞の代謝関連遺伝子発現制御機構についても培養肝細胞を用いた解析を進めた。また、培養筋肉細胞やマウス個体での解析から、既知アイソフォームの発現誘導にはCa^<2+>やAMPキナーゼを介したシグナルが重要な一方、新規アイソフォームの発現にはβアドレナリン刺激を主体としたcAMP依存性の刺激が重要なことを見出した。また、プロモーター解析の結果、新規アイソフォームのプロモーター上流には既知のcAMP反応性配列は存在せず、そのパリンドローム配列が2か所存在した。変異プロモーターを用いた検討から2か所のパリンドローム配列の両者がcAMP依存性の発現誘導に必須であることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、PGC1α新規アイソフォーム欠損マウスの遺伝子マウスの各臓器での遺伝子発現の網羅的解析により代謝関連遺伝子の発現制御機構についての知見が集積し、種々の運動類似刺激によるPGC1α新規アイソフォームの発現誘導メカニズムについても解析が進んだ。またこれらの成果は当初の予定通り、国内外の学会で発表し、一部は論文として投稿中である。よって、計画の進展は順調と判断できる。
当初の予定通り、各種の運動効果による代謝制御改善への影響をPGC1α新規アイソフォーム欠損マウスの生理学的、生化学的、病理学的解析を中心に行う。また、解析の速度を進めるため、実験補助員等を活用して研究の支援体制を増強する。
代謝変化の解析に供する計画であった遺伝子改変マウスが予定通りの数だけせず、一部計画していた遺伝子解析が行えず当該助成金が生じた。来年度はマウスの交配数や飼育体制を拡充することにより、来年度の当初の計画以上のマウスを得る計画であり、昨年度使用予定の研究費も用いて遺伝子改変マウスの解析計画を進展させる。
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