研究概要 |
PGC-1αb/αc特異的欠損マウス及び野生型マウスの安静時及び運動時の骨格筋の遺伝子発現の網羅的な解析を行うことにより、野生型マウスでは運動により発現が増加し、PGC-1αb/αc特異的欠損マウスではその発現増加が抑制される遺伝子を多数同定できた。このような遺伝子群の中にはACOT1やACOT2、PPARα、UCP2などの、脂肪酸代謝や熱産生に関わる遺伝子が含まれることが明らかとなり、これらの遺伝子の誘導不全がPGC-1αb/αc特異的欠損マウスの運動時のエネルギー消費低下に関与すると考えられた。 また、PGC-1αb及び cと同じエクソンから転写が開始される新規PGC-1αの新規アイソフォーム、PGC1α2, 3, 4の機能の解析も進めた。PGC-1αb及びcは、培養筋肉細胞に過剰発現すると、PGC-1αaと同様に、ミトコンドリア関連遺伝子や糖・脂質代謝関連遺伝子の発現を誘導したが、PGC1α2, 3, 4にはこのような遺伝子の発現誘導能を認めなかった。また、PGC-1αb及びcはPGC-1αaと同様に、培養筋肉細胞に過剰発現するとミトコンドリア呼吸能の活性化やプロトンリークの増大を引き起こしたが、PGC1α4にはこのような能力は無かった。また、PGC1α4はPGC-1αb及びcと同様に、骨格筋、褐色脂肪、心筋などに発現を認め、骨格筋では運動やβアドレナリン刺激により発現が増加した。しかし、その発現量はPGC-1αb及びcと比較して、0.1~0.01%程度であり、極めて発現量が少ないことが明らかとなった。以上のような結果から、PGC1α2, 3, 4は代謝制御における役割は極めて限定的であり、PGC-1αb/αc特異的欠損マウスは、PGC1α2, 3, 4をも欠損しているものの、その代謝表現型はPGC-1αb及びcの欠損に依存すると考えられた。
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