研究課題
前年度までにDNA発現マイクロアレイにてGKAを作用させた時に発現が変化する新規分子群を同定したが、今回、その中のFibulin5(Fbln5)に注目した。Fbln5は細胞外マトリックスを形成する弾性線維の形成に必須の分泌タンパクで、Fbln5欠損マウス(Fbln5KO)は弛緩性皮膚や肛門脱、肺気腫などを来すが、代謝調節への関与は未報告。Fbln5ノックアウトマウス(Fbln5KO)および遺伝的背景が同じ野生型(WT)に、生後8週齢より通常食(SD)または高脂肪食 (HFD)を負荷し解析。肝臓でのFbln5発現は、SD下では絶食時に有意に上昇、HFD負荷によりその変化は消失。いずれの食餌負荷においてもFbln5KOではWTに比較し体重増加が有意に抑制。SDおよびHFD負荷後20週での経口糖負荷試験では耐糖能に差は認めなかったが、HFD負荷ではFbln5KOで糖負荷後の高インスリン血症は改善。インスリン負荷試験では、SD・HFD負荷のいずれにおいてもFbln5KOでインスリン感受性が有意に亢進。ピルビン酸負荷後の血糖上昇はFbln5KOで抑制、HFD負荷によりさらにその差は顕在化、肝臓でのインスリン抵抗性改善が示唆された。単離膵島におけるインスリン分泌は両群間で差は認めず。肝の組織学的検討ではFbln5KOではHFD誘導性の肝脂肪蓄積が抑制。Fbln5KOではWTに比較しインスリン投与時の肝臓におけるAktのリン酸化が亢進。HFD負荷により、WTでは絶食時の糖新生関連遺伝子の発現上昇が抑制、Fbln5KOでは抑制されず、同時にPPARα、FGF21の発現が上昇。Fbln5KOではインスリン抵抗性の改善を認め、体重増加、肝糖新生、肝脂肪蓄積のいずれも抑制されていたことから、Fbln5の肝におけるインスリン抵抗性惹起への寄与が示唆された。肝臓の弾性線維は肝炎などの肝線維化の指標とされてきたが、細胞外弾性線維による肝臓のインスリン抵抗性制御機構は非常に興味深い。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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J Diabetes Investig
巻: 6 ページ: 124-132
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巻: 155(5) ページ: 1643-52
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http://www-user.yokohama-cu.ac.jp/~nai3naib/