研究課題
セイピンKOラットを用いて、1)脂肪細胞の発生・分化におけるセイピンの機能的意義に関する検討、2)中枢神経系におけるセイピンの機能的意義に関する検討を24年度に引き続き行った。また、25年度は新たに3)肥満発症におけるセイピンヘテロ変異の影響に関する検討を行った。1)セイピンKOラット由来皮膚線維芽細胞では脂肪細胞分化効率が著しく低下しており、ピオグリタゾン添加により分化過程前半においては中性脂肪の蓄積上昇が認められたが、分化過程後半においてはピオグリタゾン添加中にもかかわらず中性脂肪蓄積が減少し、PPARgの発現低下も観察された。中性脂肪蓄積減少の原因としてHSL(Hormone sensitive lipase)を介した脂肪分解が亢進していることを突き止め、ピオグリタゾンと脂肪分解酵素阻害薬E600の共投与によりセイピンKOラット由来皮膚線維芽細胞が野生型由来と同様に脂肪細胞分化することを明らかにした。2)野生型ラットと比較してセイピンKOラットでは有意な脳重量の減少が認められた。24年度には大脳白質での神経細胞密度の低下を報告したが、25年度のより詳細な検討により大脳皮質のみならず海馬や小脳での神経細胞密度に差がないことが明らかとなった。セイピンは脳神経細胞の増殖に関与している可能性が示唆された。3)セイピンKOヘテロラットは普通食下では野生型マウスと体重や脂肪組織重量に差がないが、高脂肪食負荷やレプチン欠損ラットとの交配により肥満を誘導すると野生型に比べ体重増加は抑制され、糖脂質代謝は悪化することを明らかにした。セイピンは発生過程のみならず成体においても脂肪組織の機能に関与していることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
セイピンKOラット由来皮膚線維芽細胞を用いた検討に重点をおいたため、当初25年度に予定していたセイピン遺伝子異常症特異的iPS細胞を用いた脂肪細胞の発生・分化におけるセイピンの機能的意義に関する検討については進展が得られなかったが、セイピンKOラット由来皮膚線維芽細胞を用いた検討によりセイピンの脂肪分解抑制というこれまでに報告の無い作用の可能性を示す事ができた。また、セイピンの成体における意義を新たに検討することができた。
これまで通り、セイピンKOラットおよびセイピン遺伝子異常症特異的iPS細胞を用いてセイピンの生理的機能の解明を推進する。また、現在我々が有しているセイピン遺伝子異常症のコホートを用いてこれまでに得られた知見をヒトにおいて確認検討する。
セイピンKOラットやセイピンKOラットとレプチンKOラットの交配に時間を要したため。セイピンKOラットおよびレプチンKOラットの繁殖、飼育管理に用いる。
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