研究課題/領域番号 |
24390243
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
中尾 眞二 金沢大学, 医学系, 教授 (70217660)
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研究分担者 |
赤塚 美樹 藤田保健衛生大学, 医学部, 准教授 (70333391)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 再生不良性貧血 / SLIT1 / エスケープ造血 / 可溶性HLAペプチドーム |
研究概要 |
免疫病態が明らかな再生不良性貧血(AA)患者96例のSLIT1遺伝子を次世代シークエンサーで解析した結果、del(13q)陽性の一例と、t(1;10)陽性1例の計2例に明らかな体細胞変異が認められた。前者のSLIT1 DNA増幅産物をサブクローニングしたところ、変異クローンの割合は35%であった。SLIT1が、ROBO1を介して造血幹細胞に影響を及ぼすか否かを明らかにするため、SLIT1-ROBO1結合によってリン酸化が抑制される分子をスクリーニングしたところ、SLIT1刺激K562細胞ではAktとERK1/2のリン酸化が抑制された。一方、shRNA導入によりROBO1発現を低下させたK562では、これらシグナル分子のリン酸化抑制はみられなかった。実際にSLIT1は濃度依存性にK562細胞の増殖を抑制した。SLIT1の遺伝子発現は、PHA培養上清添加によりヒトCD34陽性細胞やK562細胞で誘導されることから、造血幹細胞由来のSLIT1はautocrineまたはparacrineに自身の造血を負に調節していることが示唆された。この現象をin vivoで確認するため、SIRPA導入免疫不全マウスの造血をヒト造血幹細胞で再構築させる系を準備中である。 免疫病態による骨髄不全においてエスケープ造血の原因となるSLIT1以外の体細胞変異を見出すため、免疫病態が明らかなAA症例11例を対象として全エクソンシークエンシングを行った。ほぼ全例において、過去に報告のないさまざまな遺伝子変異が同定されたが、複数例に共通する変異は同定されていない。現在症例を増やして解析中である。 一方、可溶性HLAペプチドームの解析では、HLA-A*24:02に親和性の高いペプチドが2種類、それぞれ15.4%、21.4%のAA患者に同定された。これについても症例数を増やすことにより、これらのペプチドが自己抗原として機能しているか否かを明らかにする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SLIT1変異造血幹細胞のクローン性造血の存在を介して、これまで神経細胞での働きしか知られていなかったSLIT1が造血幹細胞にも作用することを初めて明らかにすることができた。一方、エスケープ造血の原因となる新規の遺伝子変異の同定は今後の検討結果を待つ必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
計画通り、症例数を増やして検討を続けるとともに、ヒト造血モデルマウスを用いたin vivo実験を推進する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究の過程で、ヒト造血幹細胞において生じるSLIT1-ROBO1シグナル分子の変化をフローサイトメトリーでみるアッセイが可能であることが分かった。このアッセイを確立するためには新鮮な臍帯血を用いる必要があるが、研究用に臍帯血を採取することについて、平成24年度中に本学倫理委員会の承認を得ることができなかった(25年5月に審査を受けることが決まっている)。倫理委員会の承認が得られたのち、このアッセイを検討する予定である。繰り越した研究経費はフローサイトメトリー用の抗体やバッファーなどの購入に用いる予定である。
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