研究課題/領域番号 |
24390244
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
前川 平 京都大学, 医学研究科, 教授 (80229286)
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研究分担者 |
三浦 康生 京都大学, 医学研究科, 助教 (70605146)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 慢性骨髄性白血病 / 白血病幹細胞 / 低酸素 / 転写因子 / 代謝 / 分子標的治療 |
研究概要 |
慢性骨髄性白血病(CML)治療成績のさらなる向上のために、再発と治療抵抗性の克服が喫緊の課題である。CML患者の骨髄中には自己複製能と多分化能を併せ持つ白血病幹細胞(CML幹細胞、が 存在し、CML再発と治療抵抗性の大きな要因となっている。本研究ではCML幹細胞の動態を理解し、CMLの根治を目指した治療開発を目指すことを目的とする。申請者らは穎粒球が感染やサイトカインなどのストレス存在下での穎粒球造血亢進に転写因子C/EBPβが重要な役割を果たしていることをすでに報告している。このC/EBPβが、穎粒球系の細胞増加を特徴とするCMLの慢性期の病態にどのように関与しているかについて検討した。CML患者骨髄中の幹細胞および前駆細胞ではC/EBPβの発現が亢進していることを見出した。さらに細胞株を用いた実験により、CMLの原因であるBCR/ABL融合タンパク質が、STAT5を介してC/EBPβの発現を亢進させていることも明らかとなった。C/EBPβのCMLの病態における機能的な関与を検討するために、レトロウイルスを用いてbcr/ab1遺伝子を導入した野生型マウスまたはC/EBPβノックアウトマウスの骨髄細胞を移植するというCMLモデルを作製した。C/EBPβノックアウトマウス細胞では野生型骨髄細胞と比して、骨髄球系細胞の増殖進行というCMLの病態は遅延する傾向にあったが、CML幹細胞が高頻度に残存しやすいということが判明した。このことからC/EBPβがCML幹細胞の維持・分化の制御において重要な役割を果たしていることが示唆された。今後、C/EBPβを介したCML幹細胞の制御において低酸素環境やサイトカインを含む微小環境が、どのように関与しているかを詳細に検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初目的とした、転写因子C∠EBPβのCMLにおける発現変化およびCML幹細胞の制御における機能を明らかにすることができた。さらに低酸素やサイトカインなどの微小環境の関与を研究するための実験系も構築が進んでいるため。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果を踏まえ、低酸素におけるC∠EBPβの発現の変化およびその制御機構、サイトカインによるCIEBPβの発現誘導の可能性やそれに伴うCML幹細胞の動態の変化を明らかにしていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初、C/EBPβノックアウトマウスの繁殖、遺伝子型決定や分子生物学的実験の補助のために 人件費・謝金の支出を予定していた。しかし、実験動物施設の飼育室の原虫による汚染などにより、飼育数を縮小せざるを得ず、平成25年度に持ち越すこととした。その他、平成25年度は消耗物品、旅費その他の支出に充当する予定である。
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