研究課題
【研究経緯と目的】Ablチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)により慢性骨髄性白血病(CML)治療は大きく改善されてきた。しかし、CML幹細胞は低酸素と言う骨髄中の特殊な分子環境(ニッチ)に潜んで休止期 (Go期) にあり、薬剤耐性を示し再発の原因となる。①低酸素環境にあるCML幹細胞はBCR-ABL非依存性に生存するため自らの代謝を改変している。この特異的経路もCML幹細胞の治療標的になる。また、②転写因子C/EBPβの発現増強がCML幹細胞を枯渇させる方向に働くことを見出した。①、②で得られた知見をもとにして、CML幹細胞に対する新規治療法を開発するのが本研究の目的である。【研究実績の概要】①に関して、通常の酸素分圧下で細胞は生存のために必要なエネルギーとしてTCA回路から計36分子のATPを、低酸素状態では嫌気的解糖系により2分子のATPを獲得する。腫瘍細胞のATP産生は解糖系に依存しており、十分な量のATPを得るために嫌気的解糖系が活性化され、その結果細胞障害性副産物であるmethylglyoxalが蓄積し、酵素glyoxalase-1 (Glo-1)により乳酸に分解される必要がある。Glo-1阻害剤で酵素の働きを阻害したところ、低酸素に適応し生存可能になったCML幹細胞株を移植されたNOGマウスの生存期間が延長することを認めた。②に関して、CML幹細胞はBCR-ABL非依存性に生存していることから、BCR-ABLの経路を介さずにC/EBPβの発現を人為的に増強できるサイトカインとしてインターフェロンα(IFN-α)を見出した。IFN-αはBCR-ABLを介さずにCML幹細胞においてSTAT5を介してC/EBPβの発現を増強することを見出した。現在、IFN-αによりCML幹細胞を移植されたマウスの生存期間が延長するか観察中である。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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