研究課題
本研究は、再発・難治性B細胞性非ホジキンリンパ腫を対象に、CD19抗原を認識するキメラ抗原受容体(CAR)発現Tリンパ球を用いる養子免疫遺伝子療法を開発することを目的とした。本年度の基礎研究成果としては、1)CAR発現Tリンパ球の抗腫瘍効果増強を目的として、CD19特異的CARの他にIL-21を発現させたTリンパ球を樹立した。CAR単独に比べて、IL-21共発現型Tリンパ球は有意にIL-21を産生し、IL-21の下流シグナルであるSTAT3のリン酸化の亢進が認められた。2)両遺伝子改変T細胞とも、CD19特異的なサイトカイン産生(IFN-γ)やヒトBリンパ腫細胞株に対する殺細胞効果を示した。両細胞の活性に差はなかった。3)担癌免疫不全マウスに遺伝子改変T細胞を投与したところ、腫瘍増殖抑制効果がin vivoイメージングで認められた。しかし、CAR単独とIL-21共発現型Tリンパ球の治療効果に有意な差は認められなかった。4)抗腫瘍サイトカインなどを併用した場合の安全対策として、腫瘍局所での発現を可能にする分子スイッチ(NF-AT誘導型プロモーター)を作製した。レポーター遺伝子を用いた解析から、本スイッチは、CARシグナル特異的な遺伝子発現制御が可能であった。再発・難治性B細胞性非ホジキンリンパ腫に対する養子免疫遺伝子療法の臨床研究に向けては、臨床研究実施計画書(CD19抗原特異的キメラ抗原受容体発現Tリンパ球を用いた難治性B細胞性悪性リンパ腫に対する遺伝子治療臨床研究)が自治医科大学附属病院遺伝子治療臨床研究審査委員会で承認され、さらに、厚生労働省厚生科学審議会でも承認された。
2: おおむね順調に進展している
CAR発現Tリンパ球の抗腫瘍効果の機能評価は、概ね計画通り進んでいるが、IL-21共発現型Tリンパ球の抗腫瘍効果増強は認められていない。遺伝子治療臨床研究に向けては、臨床研究実施計画書が施設内審査委員会及び国の審査において承認された。
IL-21共発現によるCAR発現Tリンパ球の抗腫瘍効果増強効果について、マウスを用いた治療実験を継続して評価する。また、安全対策として、抗腫瘍性サイトカインを腫瘍局所で発現させることを可能にするスイッチ・システムの開発及び機能評価を行う。臨床研究の実施に向けては、申請書が厚労省で承認されたため、臨床研究を開始する。
各年度の配分額と研究内容を考慮し、平成25年度分の一部を平成26年度以降にまわすようにした。研究費は、Tリンパ球の培養に必要な経費や実験用動物関連の物品費、関連学会出席のための旅費などに使用する予定である。
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