研究実績の概要 |
申請者らはこれまでに新規制御性T細胞集団、LAG3+Tregを同定した(Okamura,T et al., Proc Natl Acad Sci USA, 106:13974,2009)。LAG3+Tregは従来知られていたCD4陽性CD25陽性FoxP3陽性の制御性T細胞(FoxP3+Treg)と同様に抑制活性を持つが、FoxP3遺伝子を発現せず、転写因子Egr2依存性にIL-10を高産生する。 本研究により、LAG3+Tregに抗体産生を強力に抑制する活性があり、SLEモデルマウスMRL/lprに、Fas遺伝子の変異の無いMRL/+マウス由来のLAG3+Tregを少数移入すると、自己抗体産生、腎炎などの病態が著明に改善されることが判明した。対照的に、FoxP3+Tregを移入しても病態は改善しなかった。さらにB6マウス由来のLAG3+Tregは、マウスを能動免疫した後の胚中心B細胞の分化と阻害抗体産生を抑制することを明らかとした。そして申請者らは、TGF-betaファミリー分子の一つであるTGF-beta3がLAG3+Tregの抑制機能を担っていることを突き止めた(Okamura,T et al., Nat Commun. 2015;6:6329.)。TGF-beta3は刺激B細胞のSTAT6, Syk, NF-kBのリン酸化を抑制し、PD-1と共同してB細胞機能を抑制した。サイトカインではIL-27がEgr2とSTAT3依存性にTGF-beta3を誘導した。ヒト末梢血のCD4陽性CD25陰性LAG3陽性の細胞集団は、培養後にEgr2, IL-10, TGF-beta3を高発現し、試験管内の抗体産生を抑制する活性を持つ。この細胞集団はSLE患者では減少していることから、自己免疫疾患の病態との関連が推測された。今後LAG3+TregとTGF-beta3の機能解析により、自己免疫疾患の新規治療につながることが期待される。
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