研究課題
これまでの2年間で、抗Nef薬剤アッセイ系の確立と発現細胞の選択を行った。これまでSEAPをレポーターとして使用していたが、新たにより小分子なNano-luciferaseが開発され、本年度はこのマーカーに移し替え、S/N比の改善に役立てた。Nef dominant negative expression vectorを作製し、シグナル伝達やCD4やMHCのdown-regulation等の機能を失うことを明らかとした。さらにコントロールとしてその変異を有する分子クローンウイルスを作製し、これらの変異体がその機能を失っていることを確認した。NefによるHLAクラスI(HLA-I)発現低下によって、HIV-1感染細胞は細胞傷害性T細胞の認識から逃避すると考えられている。NefのMet-20などいくつかの極めて保存された領域が、HLA-I発現低下機能を担っている。しかしながら、nefは変異性が著しい遺伝子であり、こうした保存領域にもアミノ酸多型が存在することが知られている。そこで、国内の未治療HIV-1感染者654例から検体を収拾し、nef遺伝子の配列を決定し、HLA-I発現低下機能を担う領域の多型を解析した。約17%の感染者に由来するHIV-1が、NefのMet-20に変異を有していた。感染者の病態マーカーであるCD4カウントと血中ウイルス量について、Nefのアミノ酸多型との関連を調べたところ、Nefの20番目のアミノ酸に変異を有する検体では、有意にウイルス量が多いことが分かった(p=0.009)。このことから、Nefの良く保存された機能性領域のアミノ酸多型は、感染者の病態に影響することが明らかとなった。こうしたことから、Nef阻害剤がもたらす効果が期待される。
2: おおむね順調に進展している
患者サンプルの収集など外的要因によって進捗の影響を受ける実験以外には大きな遅れはないと考えられる。平成24年度は臨床サンプルが十分に集まらなかったために一部の研究は遅れがでたが、平成25年度に予定数以上のサンプルを収集、その解析を行った。スクリーニング法も確立しつつあり、またスクリーニングのnegativeおよびpositive controlになる変異体ウイルスの作製も終了し、その性状確認を行っている。
これまでに集めたサンプル解析とともに平成26年これらの情報からNefにおける重要なドメインを同定し、それに結合できそうな化合物でのスクリーニングをランダムスクリーニングと並行して行う。
平成25年度には平成24年度を大きく上回るサンプルを収集することができ、解析をすすめているが、平成24年度にサンプルが十分集まらず平成25年度に繰り越した分を使用したことによってドミノ式に平成26年度使用分が生じている。平成25年度に計画していた臨床サンプル収集予定数を上回るサンプルを得ており、これらの塩基配列決定やcytotoxic T-cell解析に次年度使用額と平成26年度請求額とあわせて使用する。サンプル数の増加によってより精度の高い結論を得られると考えられる。
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