グルコースモノミコール酸は、病原性結核菌が宿主由来グルコースを基質としたミコール酸転移反応によって生成する菌特有の糖脂質である。これまでのモルモットおよびアカゲザルを用いた研究から、グルコースモノミコール酸に対するCD1依存的T細胞応答は、TH1サイトカイン産生にシフトしたメモリー応答であり、組織においてTH1ケモカイン応答と連動して結核菌防御に貢献する可能性が示唆されている。そこでグルコースモノミコール酸を主体とした抗結核脂質ワクチン開発を目指し、サブユニットワクチンとしての効果を高めるアジュバントを検討した。グルコースモノミコール酸と旧来から高いアジュバント活性が知られていたトレハロースジミコール酸を共搭載したオクタアルギニン含有リポソームを作製しアカゲザル皮膚に接種したところ、グルコースモノミコール酸特異的T細胞応答が誘起できたが、その効果はマグニチュードならびに持続期間の点において限定的であった。一方、ヒトを含めた霊長類マクロファージC型レクチンに特有の結核菌脂質リガンドとしてグリセロールモノミコール酸を同定した(J Biol Chem 2014)。トレハロースジミコール酸とグリセロールモノミコール酸はともに霊長類Mincleを介してマクロファージを活性化し腫瘍壊死因子の発現を誘導するが、その他の遺伝子活性化プロファイルやその持続に明確な差異が認められた。Mincle刺激がTH1タイプの獲得免疫応答に重要であるとの知見と併せ、グリセロールモノミコール酸をアジュバントとして使用したグルコースモノミコール酸リポソームが特異的T細胞応答に有効ではないかと考え、そのリポソーム構築を行った。今後その有効性を検証していく予定である。
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