研究課題/領域番号 |
24390258
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
水口 雅 東京大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (20209753)
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研究分担者 |
高梨 潤一 東邦大学, 医学部, 客員教授 (00302555)
齋藤 真木子 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (20225733)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 急性脳症 / 急性壊死性脳症 / けいれん重積型急性脳症 / 難治頻回部分発作重積型脳炎 / HLA / サイトカイン / アデノシン |
研究概要 |
急性脳症は急性壊死性脳症(ANE>、けいれん重積型急性脳症(AESD)、脳梁膨大部に可逆性病変を有する軽症脳炎・脳症(MERS)、難治頻回部分発作重積型脳炎(AERRPS)など多様な症候群を含むが、これらの間には共通点・類似点もある。本研究の目的は、これらの病型における遺伝子型(複数の遺伝子の変異・多型)と表現型(臨床・頭部画像所見)の関連を解析することにより、急性脳症の多様性と共通性の分子的背景を解明して、治療の向上に資することである。 平成24年度は第一に、ANEとHLAアリルの関連について研究を行った。ANE症例24人と対照三千人の間で頻度を比較した結果、DQB1*0303とDRB1*09:01が感受性に関与している可能性が強く示唆された。両者のどちらが病態に深く関与しているのか、現在さらに解析を進めている。 第二に、AERRPSとサイトカイン関連遺伝子多型との関連を研究した。AERRPS症例14人と対照百人の問で多型頻度を比較した結果、LLIRN遺伝子のRN2多型がAERRPS発症の危険因子と判明した。その他の遺伝子(ILIB、IL6、IL8、ILlO)の多型については、両群問に有意差はなかった。 第三に、私たちが従来の研究でAESDとの関連を見いだしていたアデノシンA2A受容体(APORA2A)遺伝子多型に関して、機能解析を完了した。危険因子となる多型ではA2A受容体のmRNA発現、蛋白発現、サイクリックAMP産生のいずれも亢進していることを立証し、論文化して公表した。 これらの研究成果により、急性脳症の複数の病型で免疫反応ないしサイトカインに関わる因子(HLA、ILIRN)や神経興奮性に関わる因子(ADORA2A)が発症に深く関与していることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ANE、AERRPS、AESDのすべてについて、当初の計画にほぼ沿った研究を遂行し、それぞれにおいて重要な新知見を得ることができた。なお平成25年度以降に予定されているゲノムワイド関連解析の検体収集を同時に進め、AESDについては順調に検体を蓄積することができたが、MERSに関しては検体数が少なかった。
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今後の研究の推進方策 |
AESDに関しては当初の研究計画に沿ってゲノムワイド関連解析への移行を準備する。MERSについては検体数が不足しているので、日本小児神経学会などを通じて検体収集の努力を強化する。
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次年度の研究費の使用計画 |
検体収集状況に鑑みゲノムワイド関連分析を延期したことにともない、当該助成金が生じた。平成25~26年度の研究で最適な時期にこれを使用する予定である。
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