研究課題/領域番号 |
24390261
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
下澤 伸行 岐阜大学, 生命科学総合研究支援センター, 教授 (00240797)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ペルオキシソーム / 網羅的解析 / 脂肪酸代謝異常 / 発生異常 / 脱随 / iPS細胞 / モデル生物 / バイオインフォマティクス |
研究概要 |
本研究では国内唯一のペルオキシソーム病診断システムをより高精度、より網羅的、そしてハイスループットに進化させることにより、脂質代謝産物を中心としたペルオキシソーム関連メタボローム解析とペルオキシソーム遺伝子の多型と発現を網羅的に解析できるペルオキシソーム機能解析システムの構築と、患者リソースおよびiPS細胞、さらに疾患モデル生物を用いてペルオキシソーム代謝機能を効率的かつハイスループットに解析することにより、新たなペルオキシソーム病の発見から病態解明、治療法の開発を目指している。今年度の成果として、 (1)LC/MS/MSを加えたペルオキシソーム病の網羅的診断システムでは平成24年の1年間にペルオキシソーム形成異常症4例、副腎白質ジストロフィー(ALD)では小児大脳型5例、成人大脳型1例、AMN 1例、アジソン病1例、女性保因者12例、発症前患者4例を遺伝子診断するとともに、ハノイ小児病院への診断支援として、7例のALD患者と1名の女性保因者を遺伝子診断した。さらに本邦初の患者を発見した2つのペルオキシソーム病では、遺伝子レベルで病因を明らかにして論文に報告した。 (2)ペルオキシソーム代謝異常症における発生異常の病態解明は以下の2つの方法で進めている。 (1)ペルオキシソーム形成異常症患者の線維芽細胞より複数のips細胞を樹立し、現在、神経系を含めた各組織への分化を進め、次年度への網羅的遺伝子発現レベルでの比較検討に繋げている。 (2)ゼブラフィッシュを用いて、ペルオキシソーム形成異常症の病因であるPEX遺伝子をモルフォリノやTALENによりノックアウトまたはノックダウンしてモデルフィッシュを作成する系を確率中で、その後、個体レベルでのペルオキシソーム代謝系の障害による発生異常の病態解明を進める。 脂肪酸代謝を含めたペルオキシソーム代謝と病態との関係は、未だ発展途上であり、次年度以降に向けて、単一遺伝子病である先天代謝異常症の解明を通して、生活習慣病や神経疾患も対象にした広い意味での代謝病におけるペルオキシソームの関わりを明らかにしていきたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LC/MS/MSによるペルオキシソーム代謝産物の解析法を確立し、GC/MSと併せてペルオキシソーム病診断システムを稼働し、本邦初の2疾患を論文報告している。定量PCRによるペルオキシソーム代謝関連遺伝子発現量の測定を可能にした。ペルオキシソーム形成異常症患者よりiPS細胞を樹立した。さらにゼブラフィッシュを用いてモルフォリノによるペルオキシソーム形成異常症モデルフィッシュ作成系を構築した。
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今後の研究の推進方策 |
ペルオキシソーム病の診断については新たに確立したペルオキシソーム代謝機能の網羅的解析システムにより、さらに新たなペルオキシソーム病の探索、病態解明、治療法の開発を進める。患者iPS細胞およびモデルフィッシュを用いた病態解明についても、網羅的解析システムにより、発生過程における病態解明を進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度は比較的低予算で疾患モデルフィッシュの解析系を確立したため、25年度への次年度使用額と当初の直接経費を用いて、診断システムの展開、モデルフィッシュの作成~表現型の解析、樹立した複数の患者ips細胞の組織への分化~網羅的解析システムを用いた検討を進めていく。
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