研究課題
現在JMMLに対しては造血幹細胞移植が唯一の有効な治療法とされるが、新規薬剤の開発も試みられている。RAS経路の恒常的活性化がみられることからFarnesyl transferase阻害剤であるR115777の臨床試験が米国では開始されている。今回、チロシンキナーゼ阻害薬であるDasatinibや細胞増殖シグナル伝達経路(ERK MAPキナーゼ経路)に存在するリン酸化酵素MEKの阻害剤であるMEK162についてJMMLの治療薬となる可能性について検討した。PTPN11、KRAS、CBL変異が判明しているJMML患者(5例)の骨髄血を用いて、GM-CSF(10ng/ml)添加、無添加の条件でコロニー形成能を検討した。この系に各種濃度のDsatinibやMEK162を添加した。造血コロニー形成はGM-CSFの添加、無添加群ともにDsatinibやMEK162の濃度依存性に抑制された。また、10日間液体培養した後に、フローサイトメトリーを用いたBrdU、SubG1法で増殖細胞やアポトーシスをおこした細胞の比率を定量的に検討した。造血コロニーと同様に、DasatinibやMEK162は濃度依存性に増殖細胞を抑制し、アポトーシスをおこした細胞数は増加した。予後良好とされるRAS変異患者由来の骨髄血は、治療抵抗性とされるPTPN11&SETBP1変異患者由来骨髄血と比較して、有意に増殖が抑制された。フローサイトメトリーをもちいたBrdU、SubG1法は簡便で、定量性にも優れ、JMMLに対する分子標的薬のスクリーニング法として有用である。
1: 当初の計画以上に進展している
JMMLの発症に関わる遺伝子を、92例を対象に次世代シークエンサーを用いて検討し、新規がん遺伝子であるSETBP1を発見した。SETBP1は予後に関連し、分子標的となりうると考えられた(Nature Genetics 2013)。また、遺伝子プロモーター領域におけるメチル化プロファイルを検討し、高メチル化群が予後不良であることを確認した。本症に対する脱メチル化薬による治療の可能性が開かれた。
エクソーム解析をおこなっても、原因遺伝子がみつからない症例が、JMML全体の10%にみられることから、これらの症例を対象に全ゲノム解析をおこない新規原因遺伝子の発見に努める。我々が発見したSETBP1に対する分子標的薬のスクリーニングをおこない、候補薬剤を発見する。
ノックアウトマウスを購入予定だったが、作成が年度内に間に合わなかったため。ノックアウトマウスのデザイン・初回の受精卵へのインジェクションに50万、追加のインジェクションに25万、微生物検査に10万、輸送費に5万。
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