研究課題/領域番号 |
24390265
|
研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
吉川 徳茂 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (10158412)
|
研究分担者 |
中西 浩一 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (50336880)
島 友子 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (60433364)
戸川 寛子 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (30445093)
浜 武継 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (00508020)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | IgA腎症 / インフラマソーム / 新治療法 / 開発 |
研究概要 |
IgA腎症でみられる糸球体炎症でNLRP3インフラマソームが役割を有するかを明らかにするために、NLRP3インフラマソーム、およびその活性化の結果産生されるIL-1β・IL-18の遺伝子発現を、IgA腎症患者の腎生検組織を用いて解析した。IgA腎症8例(組織重症型3例、軽症型5例)と、対照として無症候性蛋白尿7例の腎生検組織におけるNLRP3、CASP1 (caspase 1)、IL-1β、IL-18それぞれの遺伝子発現を検討し、患者では2年間の治療前後の比較もした。無症候性蛋白尿群に比べIgA腎症群でNLRP3、Caspase1、IL-1βの遺伝子発現が有意に増加していたが、IL-18では両群に有意な差はなかった。各分子のIgA腎症軽症重症間での差は認めなかった。 NLRP3インフラマソーム関連遺伝子多型がIgA腎症の発症・進展に関与するかを明らかにするために食物アレルギーとの関連が証明されている一塩基多型rs4612666とrs10754588につき、IgA腎症患者148名と対照103名において解析した。結果として、rs4612666(Genotype frequencies、C/C:0.53、C/T:0.37、T/T:0.1036、Allele frequencies、C:0.71、T:0.29)、rs10754558(Genotype frequencies、G/C:0.51、C/C:0.27、G/G:0.21、Allele frequencies、C:0.53、G:0.47)を得た。患者と対照を比較したところ、rs4612666において、ドミナントモデルP=0.005;オッズ比0.23 (95%CI[0.077-0.69])、レセッシブモデルP=0.0002、オッズ比0.38 (95%CI[0.22-0.63])、コドミナントモデルP=0.0003、アレルP=0.00002、オッズ比2.5 (95%CI[1.6-3.8])と有意な差がみられ、Tアレルが発症危険因子であった。rs10754558においては有意な差はみられなかった。両多型において症例の臨床・病理的因子との有意な相関はみられなかった。リスクアレルの役割が食物アレルギーと逆であるため今後の検討が必要であるが、rs4612666のNLRP3インフラマソームの疾患発症への関与が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では症例数が重要であると考えられ、その集積が遅れ気味であるから。また、IgA腎症におけるインフラマソームの役割を鋭敏に検出するためには、腎全体での評価ではなく、糸球体単独の評価が必要かもしれないから。基礎的実験の遅れから動物実験開始が困難であるから。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究ではインフラマソームの役割を明らかにすることが重要であり、その確認の後、その修飾による疾患特異的治療開発のための基礎研究(動物実験等)を進める。そのために、症例の蓄積を図るとともに、糸球体のみの分子発現の検討等によりインフラマソームの役割を検討する。それらにより、インフラマソームの役割を確立する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
当初の予定より研究の一部に遅れが生じたため、次年度使用額が生じた。 糸球体のみの分子発現の検討等では、これまでより実験が困難になる可能性があり、その解決を図るための方策の選定と実行が必要である。具体的にはマイクロダイセクションの実施などを検討している。可能な限りインフラマソームの役割の早期確立をめざし、動物実験を開始する。
|