研究課題
1.わが国(7都道府県)のウイルス性下痢症の分子疫学をmultiplex RT-PCRを用い2009年から2013年でまとめた。2381検体で70%が診断でき、ノロウイルス(40%)、ロタウイルス(20%)、パレコウイルス(7%)、エンテロウイルス(6%)、アデノウイルス(6%)、サポウイルス(5%)、アストロウイルス(2%)、アイチウイルス(0.1%)であった。重感染が10%に見られた。季節性についても調べた。2.ノロウイルスの中で、GII.4が71%を占めていた。2012年末はGII.4variantSydneyが見られ、2013年になるとSydney type は減少し、GII.4の以前の型の頻度が高まった。GII.4の遺伝子、アミノ酸、立体構造、抗原性を詳細に検討し報告した。3.ロタウイルスの中で、G1P[8]、G3P[8]、G9P[8]、G1P[4]がそれぞれ59.2%、17.3% 、3.7%、0.6%であった。近年、G1P[8],G3P[8]以外のものが増えてきている。今後ロタウイルスワクチンの導入による影響を見る必要がある。4.市販の3ノロウイルスの迅速診断用キットはPCRを基準にし、感度97-93%、精度100%であった。ロタウイルス-ノロウイルス-(アデノウイルス)のIC診断キットを評価した。臨床的には有用であった。5.胃切除標本、唾液、人工血液型物質などを用いてノロウイルスVLPとの結合を調べた。8つの結合パターンがあることがわかった。サポウイルスVLPの結合は見られなかった。6.わが国で初めてCosavirusを小児の糞便から見出した。7.ヒトノロウイルス代替としてマウスノロウイルス(MNV)およびネコカリシウイルスを用いてアルコール製剤の不活化効果、抗ノロウイルス薬のスクリーニングを見た。7.東京都下でロタウイルスワクチンの接種率について検討した。
1: 当初の計画以上に進展している
研究課題に対するすべての研究が達成された。そのいくつかはすでに論文として報告しており、達成度としては高い。治療薬の研究方法にも踏み込めた。下記の代表的な論文ができた。1.Shimizu-Onda Y,Ushijima H他. The virucidal effect against murine norovirus and feline calicivirus as surrogates for human norovirus by ethanol-based sanitilizers. J Infect Chemother. 2013;19(4):779-7812.Yazawa S, Ushijima H他. Blood group substances as potential therapeutic agents for the prevention and treatment of infection with norovirusese proving novel binding patterns in human tissues. Plos One 2014, 9(2): e89071.3.Thongprachum A, Ushijima H他. Molecular Epidemiology of Norovirus Associated with Gastroenteritis and Emergence of Norovirus GII.4 Variant 2012 in Japanese Pediatric Patients. Infect Genet Evol. 2014; 23: 65-74
サポウイルスVLPのHBGA結合性については再度確認実験をする。粛々と平成26年度の研究計画を行う。1.海外でもノロウイルスのICキットが有用であるかを検討する2.サポウイルス、アストロウイルスの新しい型に対しての検索を行い、その型を含めたICキットの作製を行う3.引き続きわが国6か所からの12種の下痢症ウイルスの遺伝子検査を行う。遺伝子診断・解析を行い疫学とする。さらにロタウイルスワクチンの導入によるわが国の疫学の変化を見る。また以上の疫学成績からノロウイルスのワクチンの国内での必要性、使用する場合の野外試験の方法を検討する 4.ノロウイルスGII.4の4つの流行株に関してアミノ酸配列、3Dでの構造の違いおよび作製したVLPを用いて糖鎖の結合様式、抗体との反応の違いを詳細に検討する。サポウイルスVLPに対しても引き続きHBGA(組織・血液型抗原)との結合性を調べる5.ミニブタや免疫不全マウスを用いた方法でヒトノロウイルスのよりヒトへの感染を想定した実験を行う 6.すでに確立したマウスノロウイルス、ネコカリシウイルスを用いたノロウイルスのポリメラーゼ、プロテアーゼ阻害薬のスクリーニング方法やVLPを用いたウイルスへの候補薬の結合を調べ 抗ノロウイルス候補薬を見出す7.得られた成績は逐次学会あるいは論文として発表する
人件費の2,3月実施分の支払いのため4、5月に支給のため
すべて 2015 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 7件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (15件) (うち招待講演 3件) 図書 (2件)
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