研究実績の概要 |
1.わが国(7都道府県)のウイルス性下痢症の分子疫学をmultiplex RT-PCRで引き続き行った。2013-2014と2014-2015の一部として、ノロウイルスが半数、パレコウイルス、エンテロウイルス、ロタウイルスが20~10%、サポウイルス、アデノウイルス、アストロウイルスが5%前後であった。2つ以上のウイルスによる重感染が10~20%見られた。2.ノロウイルスの遺伝子型では近年GII.4が多かったが、今年冬はGII.3>GII.6>GII.4の順となり変化が現れた。またGII.17あるいはGIVと思われる珍しい遺伝子型が見出された。ノロウイルスカプシドのP2サブドメインの多様性が見られた。3.埼玉県新座市の保健センターと1病院でロタウイルスワクチン接種率を調べた。50~60%の乳児がワクチン接種していた。4.わが国で初めて見出されたCosavirusの便中のウイルス量を調べ、他の報告と比較したところ不顕性感染者や動物(ブタ)からの検出ウイルス量と比較し非常に高かった。5.ノロウイルスに対する抗ノロウイルス薬の開発に必要なスクリーニング方法を開発した。実例としてポリメラーゼ阻害薬、人工的な血液型物質における有用性が見出された。6.ノロウイルスの血液型グリカンとGII.4の結合様式を詳しく見た。GII.4 Sydney_2012(GII.4 Dresden_または1997)は1,2フコシルグリカン結合が強く、1,4フコシルグリカンとの結合が弱かった。1,2フコシルグリカンの発現がGII.4 Sydney_2012結合に決定的であった。7.現在わが国で市販されているノロウイルスの3診断会社のイムノクロマトキットの性能を2011-2012の50検体で比較した。僅かに感度に差があったが精度は100%であった。3キットとも国内外検体で有用であった
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究課題の多くが達成された。また、ノロウイルスに関して多様性をさまざまな角度から確認できた。その幾つかはすでに論文として報告しており、達成度は高い。 その例として下記の論文等がある。 (1)Okitsu S, Khamrin P, Thongprachum A, Nishimura S, Kalesaran AFC, Takanashi S, Shimizu H, Hayakawa S, Mizuguchi M, Ushijima H. Detection and molecular characterization of human cosavirus in a pediatric patient with acute gastroenteritis, Japan. Infect Genet Evol. 2014 28: 125-129. (2)Thongprachum A, Takanashi S, Kalesaran AFC, Okitsu, S, Mizuguchi M, Hayakawa S, Ushijima H. A Four-Year Study of Viruses that Cause Diarrhea in Japanese Pediatric Outpatients. J Med Virol., in press.
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