研究者らが提唱した「AO(アンチセンスオリゴヌクレオチド)を用いてジストロフィン遺伝子のスプライシング時にエクソンスキッピングを誘導して、ジストロフィンを発現させるDuchenne型筋ジストロフィー(DMD)の治療法」は、現在世界標準の治療法となりつつある。しかし、申請者はこれまでの研究実績から、高分子核酸「AO」に代わり、「低分子化合物」を用いる最先端手法を世界に先駆けて着想した。そして、低分子化合物が変異エクソンではあるがそのスキッピングを誘導し、ジストロフィン発現を促進する事実を明らかにした(Nature Commun2011)。 本研究では正常のエクソンを塩基配列特異的にスキッピング誘導する低分子化合物を探索・同定し、それを用いて患者培養筋細胞でジストロフィンの発現を実証し、実用性有効性ともに優れた画期的DMD治療法の確立を世界に先駆けてはかるものである。 1.各エクソンのスプライシング制御特性の解明とグループ化 ジストロフィン遺伝子の79ヶあるエクソンのスプライシング制御特性をあらかじめ解明し、各エクソンをその特性に応じてグループ分けする。さらに、この制御特性とDMD治療における必要性に応じて低分子化合物の探索をおこなうエクソンの順位づけを行った。 2.エクソンスキッピングを誘導するリード低分子化合物の探索・同定 各標的エクソンを組み込んだレポーター遺伝子を構築し、それを培養細胞に導入する。そして、低分子化合物の存在下でスプライシング反応を進行させ、エクソンスキッピング誘導能を有する化合物の同定をはかった。そのため、レポーター遺伝子の構築をした。そして、作成したレポーター遺伝子をHeLa細胞等に導入し、HeLa細胞培養の培地に各種の低分子化合物を添加した。そして、エクソンのスキッピングをRT-PCR解析の方法により探索した。
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