研究課題/領域番号 |
24390268
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 群馬県衛生環境研究所 |
研究代表者 |
林 泰秀 群馬県衛生環境研究所, 研究企画係, 研究員 (30238133)
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研究分担者 |
外松 学 群馬県衛生環境研究所, 研究企画係, 研究員 (70251113)
朴 明子 群馬県衛生環境研究所, 研究企画係, 研究員 (50450375)
大木 健太郎 群馬県衛生環境研究所, 研究企画係, 研究員 (50400966)
市川 仁 独立行政法人国立がん研究センター, 研究所, ユニット長 (30201924)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 遺伝子 / ゲノム / マイクロアレイ / 癌 / 臨床 |
研究概要 |
急性骨髄性白血病(AML)はヘテロな疾患であり、発症に関わる遺伝子変異がまだ明らかにされていない症例が存在する。近年、成人では全エクソン解析を中心に、DNMT3A、TET2、NPMI、IDH1/2などの新規の発症原因遺伝子の体細胞変異が同定されたが、これらの変異は小児AMLではまれであり、成人と小児では発症機序は異なる点も多いと思われる。今回我々は、小児AML19例の初発時、寛解時のペア検体から抽出したDNAで、イルミナ社のHiSeq2000を用いて全エクソン解析を施行した。さらに、同定された候補遺伝子に対して、同様にHiSeq2000による深読みシーケンス等を用いて変異の確認を行った。全体で80の体細胞変異がみられ、1検体あたり4-2変異であり、これまでの成人の報告(10変異)より低頻度であった。乳児期や幼児期発症が多いMLL再構成例や巨核芽球性白血病例の体細胞変異はさらに低頻度であり、変異の頻度は年齢と相関していた。これまでに報告されているFLT3、CEBPA、KIT、CBL、NRAS、WT1、EZH2に加えMLL3、ASXL2、 cohesin群、polycomb群など12種の新規候補遺伝子を同定した。候補遺伝子につき小児AMLの200例の検体を用いて、変異の頻度、臨床的な意義についての検討し、細胞株等を用いた機能解析を行っている。我々はこれまでに小児AMLにおいて、IDHI/2、DNMT3A、IVPM1遺伝子等の変異解析を行っているが、いずれも小児ではまれであり、今回の全エクソン解析でも同様に成人に比べて頻度が低いという結果であった。一方、今回の解析で12種の新規候補遺伝子が同定されており、今後、その臨床的、機能的意義についての検討を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的では小児AML 30例の次世代シーケンサーによる解析を計画したが、初年度は検体の不備等で19例の解析を行った。これまで既知のFLT3、CEBPA、KIT、CBL、NRAS、WTI、EZH2遺伝子がみつかったほかに、MLL23、ASXL1、cohesin、polycomb群の新規遺伝子が12種みい出され、サンガーシーケンスで検証を行い、更にAML200例での検索を行った。19例についての全エクソン解析はおおむね順調であったが、さらに11例の細胞を収集したので今年度に全エクソン解析を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
予定していた30例解析のため、現在さらに症例を収集したので追加解析を行う。この際に再発例があれば再発細胞を用いた全エクソン解析を行い、AMLの初発から進展へのクローン進化(clonalevolution)の検討も行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に小児AML19例の次世代シーケンサーによる全エクソン解析を行った。抽出されてきた既知の遺伝子に加え新規12遺伝子につきサンガーシーケンスにより検証を行い、新規遺伝子を同定し、その遺伝子を小児AML200例でHiSeq2000とMiSeqを用いて深読みシーケンスを行っているところである。当初の計画より11例少なかったこともあり、研究費200万円を今年度の使用のために先送りした。今年度はさらに再発検体も検索してクローン進化についても検討を行う。またAML関連30標的遺伝子(特に転座近傍遺伝子)のうち5遺伝子につき深読みシーケンスを行い、小児AMLの原因遺伝子をみいだし、分子標的療法を開発するための分子遺伝学的基盤を構築する。白血病の全エクソン解析やSNPアレイによる新たな遺伝子異常につき、リアルタイムPCR法や発現アレイを用いて発現解析を行う。
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