研究課題
1.Sphere 形成因子の網羅的解析1-1標的遺伝子の網羅的解析とその分子機構:Sphere 特異的発現遺伝子の網羅的解析として、次世代 DNA シークエンスによる遺伝子発現解析、網羅的検索の定量的解析による検証など。1-2.Sphere 特異的遺伝子発現メカニズムの網羅的解析と検証:同定された遺伝子のin silico 解析。これらの実験の結果、候補遺伝子群は現在2遺伝子(神経芽腫細胞の増殖に影響しうるサイトカイン型分子;がん幹細胞微小環境制御に関与する転写因子)が同定された。2.同定された遺伝子のTumor sphere 形成への生物学的影響を実験で確認する。細胞レベル遺伝子機能解析として、同定された遺伝子については、既にシークエンスが確認されたcDNA clone を購入し、レンチウイルスベクターにクローニングした。レンチウイルスを産生してSphere 形成が可能なNB細胞株およびPrimary NB Tumor sphere に導入した。3.さらに神経芽腫のがん幹細胞性に関わるCD133の結合分子を網羅的にスクリーニングし、この機能解析を行った。CD133と相互作用する分子として、Receptor-type protein tyrosine phosphatase  (PTPRK) を同定した。PTPRKは、がん細胞株において、その細胞内フォスファターゼドメインを介してCD133の細胞内C-末端領域と直接的に相互作用し、CD133の828番目と852番目のチロシン残基の脱リン酸化反応を触媒した。また、PTPRKの過剰発現は、CD133発現によるPI3K阻害剤による細胞死誘導への抵抗性を阻害し、その感受性を増感させた。以上からPTPRKによって制御されるCD133のチロシンリン酸化は、発がんを促進するAKTシグナル経路を介したがんの進行に重要な役割を担うことが強く示唆された。また、PTPRKの低発現はMYCN増幅と相関することが見出され、MYCNによるがん抑制遺伝子PTPRKの抑制が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
Sphere 形成因子の網羅的解析については、標的遺伝子の網羅的解析によって、候補遺伝子群として現在2遺伝子(神経芽腫細胞の増殖に影響しうるサイトカイン型分子;がん幹細胞微小環境制御に関与する転写因子)が同定されている。さらに今年度はがん幹細胞マーカーであり、神経芽腫細胞の分化を抑制するCD133の828番目と852番目のチロシン残基をグルタミン (CD133-EE) あるいはフェニルアラニン (CD133-FF) に置換した変異型CD133を作製し、CD133のチロシンリン酸化がAKTの活性化に及ぼす影響を検討した。その結果、CD133-EE発現細胞はPI3K/AKT経路の活性化が亢進し、腫瘍形成が増強した。反対にCD133-FF発現細胞ではそれらが減少した。これに加えてこのチロシン残基を脱リン酸化するホスファターゼとしてがん抑制分子PTPRKを同定し、この機能解析を行った。予定した研究として十分な成果が得られたと認識している。
昨年度までに行った遺伝子発現の網羅的解析(遺伝子発現DNAチップ、Affimetrix社;RNAシークエンス)を再試行および定量的遺伝子発現解析(リアルタイムPCR法)で検証する。候補遺伝子群は現在2遺伝子(神経芽腫細胞の増殖に影響しうるサイトカイン型分子;がん幹細胞微小環境制御に関与する転写因子)が同定されている。これらの遺伝子のノックダウン実験で得られたデータについて、今年度はshRNAを用いたノックダウン実験を行い、スフェア形成実験、神経芽腫細胞の増殖・分化・細胞死への影響を検討する。また、これら候補分子のcDNAを遺伝子バンクから入手し、レンチウイルス系を用いた発現実験を行い、スフェア形成実験、神経芽腫細胞の増殖・分化・細胞死への影響を検討する。これらの遺伝子過剰発現およびノックダウンの定常株を作成し、これを用いた移植腫瘍形成実験を行い、腫瘍形成・増殖・組織への影響を検討する。網羅的スクリーニングによって、Tumor sphere特異的に発現低下し、ヒストンコード変化またはゲノムDNAメチル化変化が一致する遺伝子で、臨床検体での発現解析において低発現が不良な予後と相関、かつ細胞レベル遺伝子機能解析でTumor sphere形成抑制に作用する遺伝子群に関しては、新規神経芽腫がん抑制遺伝子候補としてノックアウトマウス作成を行う。単独での効果が弱い場合には既存のMYCN TGマウス(ヘテロ)と交配し、その腫瘍発症等に対する併用効果を検討する。
次年度(平成26年度)に成果報告を国際神経芽腫学会(ドイツ ケルン開催)にて行う予定である。また、今年度行った神経芽腫癌幹細胞における発現遺伝子の網羅的解析の再検討を実施する必要がある。これらに加えて、候補分子の機能解析を進展させる。神経芽腫癌幹細胞における発現遺伝子の網羅的解析の再検討を実施する。候補分子の機能解析については、神経芽腫癌幹細胞モデルである神経芽腫細胞スフェアアッセイ、および免疫不全マウス移植腫瘍実験を含むものである。さらにノックイン遺伝子改変による癌幹細胞性制御因子の高発現マウスを作製し、発がん実験を含めたin vivoでの機能解析を行う。
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http://kamijo-labo.jp/about-kamijo-labo/44-tkamijo.html