研究課題
遺伝性発達障害には、Rett症候群(RTT)、Angelman症候群(AS)、Prader-Willi症候群(PWS)などのエピゲノム機構の異常が関与する疾患が少なくない。しかし、その複雑な分子機構と多彩な症状のため、これら疾患の病態解明が十分ではない。精神活動は脳内において、このエピゲノム機構が重要な役割を演じている。一方、この機構の障害により発達障害が引き起こされる。DNAメチル化による転写抑制機構を司るMECP2の遺伝子変異は、RTTとASの二つの異なる疾患をもたらす。また、MECP2と15番染色体のインプリンティング領域には高い関連性が報告され、RTTとAS、PWSに共通の病態があることが窺える。本研究では、(1)RTTの原因遺伝子であるMeCP2の遺伝子変異による脳発達障害の発症の分子機序の解明と軽症化分子の同定、(2)Mecp2発現コントロールマウスを作成し、多角的に解析し回復治療の臨界期の解明を行った。結果として、(1)軽症化マウスと変異MBDの分子生物学的解析の結果、MeCP2のMBD内の変異による転写抑制機能の変化と軽症化に関与する分子の同定を複数得た。また、Mecp2欠損マウス個体のHDAC阻害剤による遺伝子発現変化を明らかにした。(2)MeCP2遺伝子の発現とRTT発症ならびに回復治療の臨界期に関する研究では、ROSA26法によるMecp2発現コントロールマウスを作成し、その表現型、発症・治療の臨界期の解析を行い、生後2-3週での遺伝子回復が治療的効果をもたらすことを明らかにした。これらの成果はRTTの治療応用の基盤のみならず、エピゲノム機構の異常を病因とするASやPWSへの発生病態理解と治療法開発への礎となることが期待される。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Cell Reports
巻: 12 ページ: 1887-1901
doi.org/10.1016/j.celrep.2015.08.028