研究課題/領域番号 |
24390271
|
研究機関 | 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所 |
研究代表者 |
永田 浩一 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所, 神経制御学部, 部長 (50252143)
|
研究分担者 |
山形 崇倫 自治医科大学, 医学部, 教授 (00239857)
原 明 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10242728)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 自閉性障害 / 知的障害 / 大脳皮質発生 / 神経細胞 |
研究実績の概要 |
自閉性疾患(ASD)には遺伝的要因の関与が確実視され、原因遺伝子の同定と病態メカニズムの解明は喫緊の課題である。しかし、これまでのASD研究は臨床遺伝学的解析にとどまるものが殆どであり、病態形成メカニズムまで進んだ研究は稀である。そこで本研究では、1)ASDの原因遺伝子を探索・同定し、2)それらの遺伝子異常が、大脳皮質発達障害を基盤とする知的障害・自閉性障害を引き起こす分子病態メカニズムを解明して治療戦略のシーズを得る、ことを目指した。特に、コロニー中央病院や自治医科大学小児科との共同研究を推進した成果が実を結び、知的障害を伴う遺伝性疾患であるマリネスコ・シェーグレン症候群の原因遺伝子であるSIL1(蛋白質の品質管理に関与)の病態機能を分子レベルで解明し、原著論文として発表した。また、シナプスに局在する蛋白質であるLin-7A(神経細胞の極性関連分子)の知的障害における病態機能解析を遂行して原著論文として報告した。一方、臨床部門との共同研究と並行して、文献ベースで報告されている知的障害・自閉性疾患の病態関連遺伝子の解析も行った。RBFOX1は神経細胞における蛋白質の翻訳やRNAの安定性に関与する分子であるが、知的障害・自閉性障害との関連が確実視される分子である。そこで、RBFOX1の遺伝子変異に基づく機能異常と大脳皮質形成障害に焦点を当てた研究を遂行し、RBFOX1の性状解析を原著論文として報告した。さらに、RBFOX1の分子病態メカニズムの解明と自閉性障害の新規原因遺伝子であるMigfilinの病態機能解析もほぼ終了し、学術論文投稿準備中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
知的障害と自閉症の病態関連遺伝子であるSIL1、RBFOX1、Lin-7A, Lin-7Bについて原著論文を作成することができたから。また、自閉性障害の概日リズム障害を引き起こすと考えられる遺伝子Timelessの病態機能解析も順調に進んでいる。遺伝子の変異解析も順調に進展しており、今後、興味深い病態関連遺伝子が同定できる可能性がある。
|
今後の研究の推進方策 |
ASDの病態の背景として、脳の発達障害の重要性が指摘されている。脳形成障害は、画像診断が容易なマクロのレベルから、シナプスの形成障害の様な微細構造異常まで多彩である。これまでにASD原因遺伝子は多数報告されているが、遺伝子レベルでの異常(変異やコピー数異常(CNV))が如何にして蛋白質の機能異常に反映され、結果として脳組織の構造・機能異常が生ずるのかについての知見は極めて少ない。そこで今後は、「蛋白質機能」の観点で「分子から個体まで」包括的に解析したい。すなわち、個々のASD原因遺伝子が蛋白質として引き起こす障害の表現型を、大脳皮質形成における1)細胞レベル(生化学的実験、培養細胞実験)、2)組織切片レベル(細胞形態、移動)、3)ネットワーク形成 (軸索・樹状突起伸長、シナプス形成)、4)臓器レベル(海馬形成、脳組織構造形成)、5)マウス個体レベル(行動解析)の各項目に分け、包括的に解析したい。解析対象遺伝子としては、厳選された100以上のASD原因遺伝子が共同研究者によりリストアップされている。しかも、複数の施設で共通して見出された新規原因遺伝子も複数存在するので、臨床的にも意義が非常に深い。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究は概ね順調に進んだが、Shank2, NR1D1および新規の知的障害原因遺伝子Gi2の病態機能解析を完成させるために、継続して4種類の実験を行なう必要が生じたから。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額については、Shank2, NR1D1,Gi2の病態機能解析を行なうための物品費(試薬、実験動物、キット類)および、論文投稿料・別刷代に充当する計画である。
|