研究課題
本研究計画の目的は、胎生期に低栄養環境に曝された低出生体重児として生まれることと、出生後の授乳期に良好な発育パターンを示すことが、成人期・老年期に肥満やメタボリックシンドロームの発症するハイリスクとなる科学的なメカニズムの一端を解明する事である。浜松市内の妊婦に対する前向きコホート研究から、妊婦の摂取エネルギーは妊娠初期、中期、末期を通じて平均約1,600キロカロリーであることが明らかとなった。妊娠後期の母体の平均摂取エネルギーは厚生労働省の推奨値より約3%少なく、看過しがたい数の胎児が比較的低栄養環境に曝されているリスクが危惧された。母獣摂餌制限による胎生期低栄養マウスモデルにおいて、授乳期発育の指標としての3週齢離乳時Zスコアは高脂肪食負荷後17週齢の体重、血糖値、総コレステロール値のみならず、白色死脂肪組織における炎症性のM1マクロファージ浸潤、TMF-αやMCP-1などの炎症性サイトカインの浸潤のみならず脂肪組織のリモデリング(大型脂肪細胞とともに30μ以下の小型の脂肪細胞の比率が増加する)相関することを明らかにした。以上の成績から、胎生期で低栄養環境に曝された後に授乳期に良好な発育を示した場合、脂肪細胞に炎症性のリモデリングが惹起され、糖代謝・脂質代謝異常や肥満の増悪をきたすという仮説を提唱した。この内容をReproductive Science誌に掲載された (2013)。さらに、同じ胎生期低出生体重栄養マウスモデルの解析において、肝臓重量などnon-alcoholic fatty liver disease (NAFLD)様変化においても同様の傾向を認めた。これらの知見から、胎生期で低栄養環境に曝された後に授乳期に良好な発育を示した場合、NAFLD発症のハイリスク群となる可能性が示された。
2: おおむね順調に進展している
予定の研究成果を収め、論文が受理されているから
これまでのの胎生期低栄養マウスモデルの解析から、胎生期の低栄養環境に引き続き良好にcatch upした場合、脂肪組織に慢性炎症を惹起し、肥満の増悪のみ成らず糖代謝や脂質代謝の異常を喚起する可能性が明らかとなった。その制御メカニズムの候補として小胞体ストレス応答に着目して研究を進めたい。
当初の動物実験の予定より少ない回数の実験で、所定の実験成果を得ることができたため。平成26年度では、当初の研究計画に含まれなかった研究課題に対する探索的な実験を追加して行う予定である。具体的には、胎生期低栄養環境が成長後に脂肪細胞における慢性炎症増悪を助長する具体的なメカニズムとして小胞体ストレスの活性化を想定し、その検証を目指した研究を行う予定である。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 4件)
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