研究課題/領域番号 |
24390276
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
塩原 哲夫 杏林大学, 医学部, 教授 (10118953)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ヘルペスウイルス / 単球 / ホーミング / 薬疹 |
研究概要 |
Monocyteの分画において血管と末梢組織(皮膚)を絶えず循環し、ウイルス感染を検知し、局所の炎症の修復にも関与するCD14(dim)CD16(+) patrolling monocyte(pMO)が注目されている。我々がこの分画がヘルペスウイルス(HSV, VZV)に結合出来るレセプターを発現していることを見出し、この細胞がウイルスが関与する皮膚疾患の病態成立にどのように作用しているかを明らかにしたいと考えた。 1. 本研究で明らかになったのは、この分画がdrug-induced hypersensitivity syndrome(DiHS)とStevens-Johnson症候群(SJS)/中毒性表皮壊死症(TEN)で全く正反対の動態を示すことである。DiHSにおいては急性期にはこの分画は消失するのに対し、SJS/TENでは表皮に浸潤し、著明な表皮障害を惹起することが分かった。 2. pMOが直接的にウイルス感染に関与していることを明らかに出来なかったため、他の細胞分画との相互作用に焦点を絞って今年度の研究を進めることにした。 3. とくに重要と考えたのはregulatory T cell(Treg)との相互作用である。pMOばかりでなく様々なMO分画が、どのようにTregを増殖させるかの検討をTregをCFSEでラベルすることにより行った。この解析は主に健常人PBMCを用いて行った。最もTregを増殖させたのはCD14(+) classical monocyte (cMO)であり、pMOはその能力は低かった。このことはpMO分画の著明な減少がDiHSにおけるTregの増殖に関与するばかりか、ウイルス感染細胞を検知することが出来なくなり、ウイルスの再活性化をもたらす可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
pMOとTregの相互作用の一端は明らかになったが、それはあくまで健常人での相互作用であり、DiHS、SJS/TENの急性期、回復期、マイコプラズマ感染の急性期、回復期などの様々な時期のPBMCを用いて、その相互作用を明らかにするべく研究をすすめている。しかし、細胞の分離などに極めて長時間を要するため、現在まで安定した結果が得られていないのが達成度が予定通り進んでいない原因である。
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今後の研究の推進方策 |
現在多数の組合せを整理し、Tregのソースは健常人に決め、それに様々な病態の様々な時期の患者から得られたpMOを加えるという実験系に統一して行うことにした。pMOから産生されるどのサイトカインが重要かに関しては、TregとpMOの共培養の実験系にサイトカインに対する抗体を加えることで、Tregの増殖にどのような影響を与えるかについても検討して行く予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
DiHS, SJS/TENの急性期、回復期、マイコプラズマ感染の急性期、回復期などの様々な時期のPBMCを用いての研究のため長期間を要する。本年度ではこれら全てのPBMCを得ることが出来ず、次年度にわたり引き続き研究をすすめるため、本年度使用する予定額を一部次年度に回すことにした。 引き続きDiHSとSJS患者のpMO分画がTregの分化、増殖、機能に与える影響についてサイトカインをみていく。
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