研究概要 |
統合失調症の発症には遺伝要因と環境要因が密接に関与していると考えられているが、病因は明らかにされておらず、DNAメチル化などエピジェネティックな変異と精神疾患を関連付ける研究が急速に注目を集めている。しかし、患者試料を使用した場合の問題点の1つに、投薬の影響評価がなされていないという点が挙げられる。本研究では、抗精神病薬投与後の遺伝子発現及びDNAメチル化変動を体系的な評価を行う。 本年度は、代表的な抗精神病薬であるハロペリドールとリスペリドンに焦点をあて、ヒト神経系細胞株を用いた培養実験を行った。それぞれの薬剤について低濃度、高濃度の2点で1週間の培養を行った後、DNAおよびRNAの抽出を行った。DNAメチル化状態はIllumia社のHuman methylation450,遺伝子発現はIllumina社のHuman HTを用いて測定を行った。 DNAメチル化状態について解析を行ったところ、両薬剤、両濃度で共通してDNAメチル化状態の変動が認められる領域を多数同定した。また、それぞれ特異的にDNAメチル化状態が変動する領域を同定した。変動が認められた領域にはグルタミン酸受容体関係の遺伝子やこれまでの遺伝学研究で同定されてきた遺伝子が含まれており、一部の領域に関してはパイロシークエンシング法を用いた独立した確認実験を行った。 今後、取得済みの遺伝子発現データとの対応関係などを詳細に解析して行くと共に、他のクラスの抗精神病薬について同様の検討を行う予定である。
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