研究課題
標準的な薬物療法に抵抗する難治性の抑うつ状態は、気分障害、脳器質性障害その他の精神疾患でしばしば認められ、患者の日常活動を著しく障害するだけでなく、自殺行動に結びつくことも多いことから、新しい治療法の開発が医学的・社会的急務となっている。本研究では、NMDA型グルタミン酸受容体遮断薬が、難治性抑うつ状態に対して即効的で持続する効果を発揮することや、抑うつ状態の動物モデルを改善することが報告されている点に注目し、 NMDA受容体機能を、本受容体の様々な調節部位やそれ以外の分子細胞システムを介して抑制することによって、難治性抑うつ状態を改善する、新規治療法を開発するための基礎的・臨床的研究を行う。今年度は、新規治療法の標的となるNMDA受容体の調節の分子細胞機構を明らかにする目的で、本受容体活性化に必須のコアゴニストのD-セリンについて、その合成酵素・セリンラセマーゼ(SR)と細胞内外のD-セリン濃度の関係を調べた。共同研究者のハーバード大学コイル教授から供与された、SR遺伝子を胎生期から欠損マウスの内側前頭葉皮質において、野生型littermate controlと比べて、組織中および細胞外液中Dの-セリンが著明に低下し、従来の報告と一致したが、NMDA受容体機能を反映すると考えられる、NMDA局所注入後の細胞外タウリン濃度の上昇は、変化が見られなかった。我々の他の実験系ではSRのコンディショナルノックアウト後、比較的短期間では、同様の操作で細胞外タウリン濃度の上昇の抑制が見られたことから、胎生期からのD-セリン濃度低下が、もう一つの内在性NMDA受容体コアゴニストであるグリシンによって代償されたと推測された。これらの結果は、NMDA受容体機能を治療目的で抑制するためには、D-セリンとグリシンの相互作用を考慮する必要があることを示唆している(特許に関連する可能性があり具体的情報は公表しない)。
3: やや遅れている
NMDA受容体コアゴニストD-セリンの脳内濃度制御とNMDA 受容体機能の関係や、D-セリン代謝産物とD-セリン合成酵素との関係で新知見が得られ、新規治療法開発のための基礎研究進んでいるが、臨床研究におけるエントリーが遅れている。
遅れているイフェンプロディールを用いたオープンラベル臨床試験への患者エントリーを進める。このため、対象患者の拡大を図れるよう倫理委員会への申請内容を変更する。基礎的研究では、NMDA受容体―D-セリンシステムについて、調節機構・病態・抗うつ効果に繋がる抑制法等の検討をさらに発展させる。
平成25年度に発注した物品の中に、製造や輸送の遅れのために、予定されていた年度内の納入が困難になったため、物品が到着する次年度の使用とした。平成25年度に発注し、納入が遅れていた物品の支払いをするため「自然痔使用額」となって研究費については、平成26年度の納入時た使用する計画である。
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