研究課題
At-Risk Mental State(ARMS)患者、統合失調症患者、および健常者を対象に以下の検討を行った。(1)富山大学で収集されたARMS患者19人、統合失調症患者38人、および健常者19人において、durationミスマッチ陰性電位(dMMN)、P3aおよびreorienting negativity(RON)を測定した。経過観察中に統合失調症を発症したARMS患者のdMMN振幅は、発症しなかったARMS患者に比較して減少していた。統合失調症患者のRON振幅は健常者より減少し、経過観察中に統合失調症を発症したARMS患者でも減少傾向を示した。(2)富山大学、東邦大学、東北大学、および東京大学で収集されたARMS患者合計108人および健常者合計107人の磁気共鳴画像(MRI)を用いて、FreeSurfer software version5.3により大脳皮質厚を2群間で比較した。その際に、年齢、性、撮像施設を共変量とした。ARMS患者では、健常者に比較して、前頭、側頭、および島において皮質厚の減少が認められた。逆に、中心溝付近および後頭において、ARMS患者の皮質厚は健常者より増大していた。経過観察中に統合失調症を発症したARMS患者としなかった患者の間に、有意な差異は認められなかった。以上の結果から、統合失調症の前駆期から発症早期に認められる神経生物学的変化の一部が明らかになった。事象関連電位のdMMNなどにおける機能的変化は、MRIによる構造的変化よりも、後の顕在発症の予測性が高く、客観的補助診断法として有用であることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
施設ごとのデータ収集は概ね順調に進んでおり、各検査モダリティごとの解析もほぼ計画通りに進み、研究結果を順次公表している。また多施設MRIデータの解析もほぼ順調に進んでいる。
他施設との共同研究体制を維持し、データ収集も継続しながら、解析をさらに進めて行く。今後は、各検査モダリティの解析から得られた結果を統合して、統合失調症早期の神経発達病態解明を目指すとともに、多施設データを用いた解析を進め、客観的早期補助診断法の開発を行う。
前年度末に予定していた成果発表が、学外共同研究者との協議に手間取って困難となったため、成果発表を次年度に持ち越し、旅費として見込んでいた金額を使用することとした。
前年度末に予定していたが今年度に繰り越した成果発表のための旅費に次年度使用額を充て、今年度分として請求した研究費は計画の予定通りの遂行に用いる。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (15件) (うち招待講演 3件) 図書 (1件)
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