研究課題/領域番号 |
24390284
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
山脇 成人 広島大学, 大学院・医歯薬保健学研究院, 教授 (40230601)
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研究分担者 |
森信 繁 広島大学, 大学院・医歯薬保健学研究院, 特任教授 (30191042)
岡本 泰昌 広島大学, 大学院・医歯薬保健学研究院, 准教授 (70314763)
山下 英尚 広島大学, 大学病院, 講師 (50294591)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 自己関連付け課題 / うつ / CBT / 痛み / 情動 / ストレス / MRI / BDNF |
研究概要 |
【平成24年度】 健常人を対象に、自己関連付け課題遂行時と安静時の脳血流の変化を測定し、情動制御に関わる前頭側頭部位の脳機能を検討した。その際、うつ傾向を測定するBDI2、幼若期ストレスを計測するCATS等の質問紙データの集取、及び血中の神経可塑的修復に関連する分子(Brain-Derived Neurotrophic Factor : BDNF)濃度の測定を行った。解析の結果、幼若期ストレスが高いほど、うつ傾向が高く、内側前頭部における自己関連付け課題及び安静時の脳活動が低下することが明らかとなった。さらに安静時の脳活動が低下しているほどBDNF濃度が低下していることも明らかとなった。これらの結果は、うつと情動制御に関わる神経、分子、心理的機序についての示唆及び、CBTを用いた検討への基礎を与えるものである。 また、うつ病患者に対してCBTの治療前後で自己関連付け課題中の脳活動の測定し、健常者も含め比較検討を行った。ポジティブ刺激呈示時に活動低下がみられていた内側前頭部、腹側前帯状回で、CBT治療後では活動増加がみられ、ネガティブ刺激呈示時ではCBT治療後で活動低下が認められた。特に腹側前帯状回の活動では抑うつ症状の改善と負の相関が認められた。これらの結果は、うつ病に対するCBTの治療効果が内側前頭部、腹側前帯状回といった情動制御に関わる特定の脳領域との関連が示唆され、うつ病の治療機序の理解につながるものである。 さらに健常者に対して痛み刺激を用いた情動ストレス課題をMRI、MEG(脳磁図)で行い、痛み刺激時における脳活動のうち、前帯状回、扁桃体、一次体性感覚野の脳領域で悲しみを感じているときにより強い活動がみられていた。これらの結果は、痛みと情動に関わる神経、心理的機序についての示唆及び、今後の慢性疼痛の病態理解やCBTを用いた検討への基礎を与えるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
うつ病に対して、自己関連付け課題を用いたfMRIによる脳機能解析を認知行動療法前後で行うことができ、本研究の目的である治癒過程における修復機構の解明に関し一定の成果を上げることができたが、他の課題においてはまだ成果を上げていないため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、情動反応およびその制御機構の脳内プログラムを解明することを目的としており、健常人、大うつ病、慢性疹痛患者を対象として情動ストレス課題、認知的再評価課題、自己関連付け課題などを用いてfMRIによる脳機能解析を行い、情動反応およびその制御機構の解明および薬物療法、認知行動療法による治癒過程における修復機構の解析を継続する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度において実施する予定であった研究計画に若干の遅れが生じたため、研究費を次年度に一部繰り越し、平成25年度の早い時期炉それらの研究を(H24年度分の研究の一部である慢性疹痛患者に対する情動ストレス課題)行うことにした。
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