研究課題
今年度の実験において我々は5'UTRおよび3'UTR依存性発現調節の候補遺伝子の機能解析を行った。5'UTR結合タンパク質に関してはSRSFファミリーが有望であると考えられた。これらタンパク質はHIF-laあるいはcMYCの5'UTRを挿入したルシフェラーゼリポーターからのタンパク質発現を数倍に活性化することができた。これら候補遺伝子の発現を、マイクロアレイにて比較したところ、予想通り高転移性株では発現が高い傾向が認められた。これらの発現が遺伝子プロモーター領域の配列の違いによるものか否かを判断するため、アレイ解析に用いた細胞のゲノムDNAを出発材料にしてプロモーター領域のシークエンスを行ったところ顕著な塩基置換は認められず、メチル化などのエピジェネティックな変化の解析が今後の課題として提起された。3'UTR依存性発現調節の候補遺伝子としてELAVLファミリータンパク質の1つであるELAVL2の機能解析を行った。ELAVL1はほぼ全ての細胞において多量に発現し主に核局在を示すが、ELAVL2は主に細胞質に局在する。ELAVL2導入細胞株ではELAVL1を導入した細胞よりも、ARE mRNA由来のタンパク質発現レベルが有意に上昇していた。蛍光タンパク質タグを付与したHuRを単独で強制発現させてもELAVL1は核局在を示したが、ELAVL1とELAVL2を同時に発現させた細胞では細胞質局在するELAVL1が認められた。two-hybrid法にて、ELAVL1どうしの結合よりELAVL1-ELAVL2間のほうがより強い結合であることが示された。この結合にはELAVL2のN末端、C末端領域が必要であった。ELAVL1の核から細胞質への局在変化にはELAVL2が大きく関わっていること、ELAVL2の発現量はがん細胞の悪性度と相関することが示唆された。これまで3'UTR依存性の翻訳抑制機構を担うと報告されてきたELAVL1はむしろHIF-1αの翻訳効率を低下させることが示され、従来考えられてきた調節機構はより複雑なものであることが示唆された。
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