研究課題/領域番号 |
24390288
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
中野 隆史 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20211427)
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研究分担者 |
鈴木 義行 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (60334116)
大野 達也 群馬大学, 重粒子線医学推進機構, 教授 (10344061)
野田 真永 群馬大学, 医学部附属病院, 講師 (60396645)
清原 浩樹 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (10344920)
齋藤 淳一 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70572816)
尾池 貴洋 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (10643471)
白井 克幸 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (10400748)
吉田 由香里 群馬大学, 重粒子線医学推進機構, 助教 (90431717)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 重粒子線 / 放射線治療 / 放射線生物 / 粒子線治療 / 放射線腫瘍学 |
研究実績の概要 |
1.肺腺癌における新規ドライバー融合遺伝子KIF5B-RET、クロマチンリモデリング因子BRG1とBRMの合成致死性、クロマチンリモデリング因子p300阻害による放射線増感、がん関連遺伝子(TP53やEGFRなど)変異がX線・炭素イオン線感受性へ与える影響について調べた。 2.脳腫瘍の放射線治療を考慮して、神経幹細胞および神経膠芽腫細胞の増殖率を指標とした放射線感受性について比較検討した。【方法】ヒトES細胞由来正常神経幹細胞NSCおよびヒト神経膠芽腫細胞株A172を用いた。細胞播種後翌日にX線(150 kVp)または炭素線(290 MeV、6 cm SOBP中心)照射を行い、照射後96時間まで24時間毎に細胞数を計数し、増殖曲線を作成した。また、相対増殖率50%の線量からRBEを求めた。さらに、Ethidium bromide/Acridine orange二重蛍光染色を行い、後期アポトーシスおよびネクローシスの頻度を解析した。【結果】増殖率を指標とした放射線感受性はA172と比べてNSCの方が約4倍高く、両細胞共にRBEは約2であった。また、両放射線による細胞死型は、NSCでアポトーシスが主であったのに対し、A172ではアポトーシスもネクローシスも顕著に検出されず、誘発される細胞死型も異なることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.肺腺癌における新規ドライバー融合遺伝子KIF5B-RET、クロマチンリモデリング因子BRG1とBRMの合成致死性、クロマチンリモデリング因子p300阻害による放射線増感、がん関連遺伝子(TP53やEGFRなど)変異がX線・炭素イオン線感受性へ与える影響について調べ、それらの因子がX線の放射線感受性に大きな影響を与えることを示すことができた。重粒子線治療にはあまり大きな影響を与えないことも明らかになった。次世代の「個別化・放射線増感治療」が期待される。
2.脳腫瘍の放射線治療を考慮して、神経幹細胞および神経膠芽腫細胞の増殖率を指標とした放射線感受性について比較検討し、増殖率を指標とした放射線感受性はA172と比べてNSCの方が約4倍高く、両細胞共にRBEは約2であり、両放射線による細胞死型は、NSCでアポトーシスが主であったのに対し、A172ではアポトーシスもネクローシスも顕著に検出されず、誘発される細胞死型も異なることが明らかとなった。このことは放射線誘発の細胞周期停止、DNA損傷修復や細胞死誘導メカニズムが両細胞間で異なる可能性が示唆された。 これらの成果から、研究は順調に進んでいるものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
1.小細胞肺がんは、ドライバー遺伝子突然変異によって分類される。 しかし、カーボン-イオン・ビームの相対的な生物学的効果(RBE)とドライバー遺伝子変異の関連は、知られていない。 この課題を研究するために、我々は代表ドライバー遺伝子EGFRとKRASの突然変異に関して、X線とカーボン-イオンに対する15のNSCL細胞株の感受性を調べる。 クロノジェニックアッセーを用い、 安定型変異体または野生型のEGFRを発現している同遺伝子型NSCL細胞株など6種のEGFR変異株と9種のEGFR野生株を用いて、EGFR変異株のRBEは、野生型株のそれらより低いかどうかについて検討する。 DNAPK抑制剤NU7441を用いたSer139を燐酸化されたヒストンH2AXについての免疫蛍光分析を用いて、EGFR変異株がEGFR野生株と比較してX線によって誘発されるDNA二本鎖切断(DSBs)の非末端結合が不完全かどうかを検討する。 一方、EGFR突然変異ステータスに関係なく、カーボン-イオン線によって誘発されたDSBsの修復能はX線によって誘発されたDSBsの修復能と相違があるか検討する。
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