研究課題/領域番号 |
24390292
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
福山 秀直 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90181297)
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研究分担者 |
浦山 慎一 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10270729)
麻生 俊彦 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50397543)
松橋 眞生 京都大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (40456885)
大石 直也 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (40526878)
鈴木 崇士 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10572224)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 機能的MRI / デフォルトモードネットワーク / アルツハイマー病 / 認知症 / 脳血流 / レーザースペックル血流計 / MEG |
研究概要 |
ヒトの機能的MRI実験:アルツハイマー病との病因論的な関係が想定されている脳のデフォルトモードネットワークの機能的結合性を評価することによって、認知症をはじめとする変性疾患の発症予測を行うことが本計画の最終ゴールである。機能的MRIは、脳血流の変化をとおして脳のどの部位が活動しているかをみる手法である。健常者における基礎実験によって、撮像方法の最適化と、脳の異なる部位の活動の類似性をとおして結合性を測定する方法の確立を行った。本研究での主な対象であるアルツハイマー症例でのデータ取得は、残念ながら装置の故障によって次年度に持ち越された。しかし共同研究者による、関連施設における脳梗塞などでのデータ収集は進んでいる。また脳磁図(MEG)による電気生理学的データを、機能的MRIと同じ条件で取得しており、脳血流に紛れ込む神経活動以外のノイズ成分の評価を検討した。 動物でのMRI実験:我々が開発した拡散強調機能的MRIで、ニコチンに対する脳の応答をラットで調べた。ニコチンはアルツハイマー病と関連の強いアセチルコリン受容体を刺激する物質であるが、その生理作用は複雑で、脳血流に影響をおよぼすことから、脳への影響について従来法での解明が進んでいなかった。今回の実験では拡散強調機能的MRIにおいて、ニコチンの影響は従来法と全く異なることがわかり、さらに解析を進めている。 動物での脳血流実験:昨年度に開発した、小動物の脳血流を直接的かつ詳細に評価可能なレーザースペックル血流計の計測・評価法を改良し、脳血流変化をより鋭敏に捉えることに成功した。また、複数の麻酔薬による脳血流や代謝への影響を考慮した上での実験系を新たに構築し、より安定したラット脳賦活試験の遂行が可能となった。神経活動により近いバイオマーカー評価を可能とすべく、光を用いて脳における代謝変化等を評価するためのシステムを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定していたアルツハイマー症例でのデータ取得ができていない。これは施設の水漏れ事故により現有のMRI装置が交換になり、平成26年に入ってようやく設置が完了したためである。次年度には早速データ取得を開始する。 レーザースペックル計測系においては、さらに高精度に脳血流評価を行うことが可能となり、当初の計画以上に進展していると判断した。神経活動に近いバイオマーカー評価の計測系に関しては、システム構築は行ったものの検証・改良はこれからであることから、おおむね順調に進展していると判断した。数理モデルの作成にはまだ着手できておらず、計画よりやや遅れていると判断した。以上より、動物実験の領域では、計画はおおむね順調に達成できていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は基礎実験の結果を応用へ移すことに注力する。アルツハイマー症例や、それより軽い軽度認知機能障害、そして対照群として健常高齢者を対象に、機能的MRIのデータ取得を行う。機能的MRIの撮像方法と解析方法の多種多様な組み合わせから、認知機能やその後のアウトカムと一致するバイオマーカーを見出す。 前年度までに構築し、脳血流計測系を確立したレーザースペックル血流計を用いて、ラットにおける賦活由来の脳血流変化を引き続き記録するとともに、内因性信号の光イメージング技術を組み合せてヘモグロビン変動も併せて評価する。前年度より引き続き、光を用いた神経活動の同時計測手法の開発を行い、賦活に伴う脳血流・神経活動の同時記録手法を確立することで、DfMRIの神経活動としての評価の裏付けを行う。これらの計測結果から、脳血流、ヘモグロビン変動、神経活動の関連性を示す数理モデルを構築する。
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次年度の研究費の使用計画 |
国内旅費が予定よりも少額であった。 旅費として使用する。
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